ガーリー・エアフォース 夏海公司(電撃文庫)
人類の航空戦力を圧倒する謎の飛翔体が脅威となっている世界を舞台にした美少女×戦闘機ストーリー。
ボーイ・ミーツ・ガールからはじまるラブコメと空戦がメインになっている作品です。
航空系専門用語が頻繁に出てくるため、ミリタリー知識がないとかなり目が滑りますが
肝心のバトルはあくまでラノベらしく熱く華やかに描かれているため、雰囲気は掴み易いかと。
ただ、人類側が絶滅の危機レベルで劣勢な割に、イマイチ絶望感が伝わってこないのが難点でしょうか。
ラストは非日常を終わらせた少年は青年へと成長し、新たな時代で相棒と共に空を飛ぶのだったエンド。
ラブコメ的にはメインヒロインのグリペンと結ばれ、人の姿を失った彼女とずっと一緒で終了。
主人公は空への憧れと復讐心からパイロットを目指す少年。
直情的で熱くなりやすい性格であり、後先考えず勢い任せに動いてしまうこともしばしば。
が、根は素直でまっすぐなため、頭が冷えればちゃんと反省も後悔もできる。
つまりは、良くも悪くも単純一途な思考回路の持ち主。
ヒロインは落ちこぼれのアニマ、姉貴分な幼馴染。サブに天真爛漫なアニマ、清楚系腹黒アニマ。
一番のお気に入りはスウェーデンの戦闘機にチューニングを施したドーターを駆るアニマの少女、グリペン。
常に無表情で口調も淡々としたものであるため、一見するとクール系の美少女に見えるが
結構おっちょこちょいで慌てんぼう、そして天然の気があり、負けず嫌いで意地っ張り。
また、基本的にハンガーとラボを行き来する生活だったため、かなりの世間知らずであり羞恥心も皆無に近い。
と、見た目の雰囲気とは裏腹に、不思議ちゃんなキャラをしている。
評価はC。
戦闘機同士の空戦描写は迫力のスピード感と一瞬の緊迫感、そして格好良さもあって読み応えは抜群。
人外であるがゆえのヒロインたちの浮世離れ言動と、その対応に苦労する主人公の姿も見ていて和みました。
とはいえ、本筋が絡む場面ではシリアス要素が濃いため、全体的な読み味は重めではありましたが。
本筋は序盤から終盤までずっと終わりのない閉塞感が漂っており、グリペンとの恋路ですら未来が見えない
という、重い状況が続きでしたが、終わってみれば決して完全無欠のハッピーエンドでこそなかったものの
この作品はこの終わり方が一番美しい、と納得できる形におさまっていた印象。
まあ、個人的には不格好でも、無理やりなご都合主義でも完全無欠のハッピーエンドが見たかったところですが。