ラストダンジョンへようこそ   周防ツカサ(電撃文庫)



強欲な冒険者たちから魔王の娘を守るべく奮闘する少年の迷宮防衛戦物語。
基本はモンスターや罠をメインに、そして最後は自力で侵入者を撃退するというゲームっぽさが楽しい。
迷宮を攻略する、ではなく、運営し、防衛するという逆視点構成も面白いですし。
ただ、蘇生システムが敵味方両方にあるため、コミカル度優先で緊張感はほとんどないわけですが。
ラストは数々のダンジョン危機を乗り越え、そして異世界での日常が再び幕を開けるのだったエンド。
ラブコメ的には時々良い雰囲気になることはあっても、これといった進展がないまま終了。

主人公は昼は学校の問題児、夜は魔王の娘に召喚されてダンジョンマスターな少年。
精神年齢は小学生並な子供っぽい性格で、いつも人生を自由気ままに生きている。
何か作っていないと落ち着かない性質であり、そのおかげなのか、美術の成績は優秀。
ゲーム&悪戯好きで、悪知恵が働くタイプでもあるため、学校ではよくトラブルを起こしている。
結構スケベなところがあるが、その方向性も精神年齢と同じく、子供じみた感覚のほうが強い。
座右の銘は「他人は騙しても、自分は騙すな」

ヒロインは魔王の一人娘、完璧超人な生徒会長。
他にも女の子は複数登場するも、ヒロイン的扱いを受けていたのは上記の二人のみ。
一番のお気に入りは地価迷宮の主にして魔族の最高責任者、ロレッタ・アハル・オルムステッド。
温和で誰にでも分け隔てなく優しく、純朴で素直な性格をしており、残酷なことが苦手。
また、箱入りで世間知らずな育ちから、どこか感性がズレており、天然気味。
しかし、見た目や内面の幼さに反した芯の強さと自立心の高さを兼ね備えており
更には、まっすぐでひたむきで努力家と、上に立つ者としての資質は十分持っている。

評価はC。
罠の内容について話し合ったり反省会をしたり、侵入者が悪戦苦闘している様子を眺めたり、資金難に困ったり。
と、ゲームの敵サイドの裏側を覗いているような状況が実に面白かったです。
キャラに関しても、ヒロインであるロレッタは健気可愛いかったですし、味方の魔物たちもそれぞれ個性豊かで
見てて飽きなかったですしね。まあ、主人公が少々ガキすぎてラブコメが薄くなっていたのは難点でしたが。
本筋は三巻という少ない巻数の中で、過不足なく綺麗に話が纏まっていたかと。
個人的にはもっと色んな侵入者たちとの戦いや、ヒロインとのラブコメの進展を読みたかったのですが
ダンジョンという狭い世界観ゆえに元々話を広げる余地が少ない作品でしたし、妥当な終了だったと思われ。