太陽のチャンネル   漆原雪人(講談社ラノベ文庫)



最強の殺し屋と謳われた少年と真祖の吸血鬼の少女がおくる「太陽」を見つけ出すための物語。
大枠で言えば、伝奇&異能バトルアクションものになるかと。主人公は無能力なので負けまくりですけど。
裏の仕事をこなす少年少女たち、というのはよくある設定ですが、後援者の存在こそあれど
同年代の仲間たちと一緒に事務所を開いている、という独立性は中々見ないので新鮮味があります。
ただ、主人公の人生の目標が復讐ということもあり、全体の雰囲気が暗めなのが難点でしょうか。
ラストは、少年は己の太陽を見つけ、手を繋いで日々を生きていくエンド。
ラブコメ的には特に進展も言及もなしで終了。

主人公は表向きは高校生として、夜は報酬次第で何でもする裏の仕事人。
若年ながら、裏社会では最強の殺し屋として名高い。が、本人は復讐以外は何事にも消極的で
関わらないで済むことには関わりたがらず、戦闘行為も好まない。
また、過去の失敗から、必要以上に慎重で内向的、そして責任や悩みを一人で背負い込みたがる気質で
その上押しに弱く、流されやすく、優柔不断な性格でもある。

ヒロインはハーフの吸血鬼、情報屋な幼馴染、密偵な生徒会長、戦闘屋な先輩、僕っ娘詐欺師。
一番のお気に入りは情報屋にして主人公の相棒な幼馴染、村田有希。
表情に乏しく、いつも難しい顔をしていることから意図せず周囲を怯えさせており
加えて、言葉少なく、不器用で。感じたことを回り道することなくストレートに表現するため
その正直さはとかく厳しい言動に変換されがちで、近寄り難いと見られてしまうことが多い。
根は仲間想いであり、シッカリ者。特に相棒である主人公に対しては言い難いこともハッキリ言う。

評価はC。
一巻二巻共に四百ページ越えと大容量な割に、ボリューム感はそれほどではなかった印象。
大半は主人公が敵にボロ負けしては誰かに助けられ、落ち込んで再起して、の繰り返しでしたし…
コメディならともかく、重いシリアスで無力な主人公を何度も見せられても萎えるだけなんですよね正直。
最後の戦いの決着すら、命懸けだったとはいえ詐術&他力本願とまるで爽快感がなかったしなぁ。
まあ、最強と最弱、それぞれの殺し屋の本当の意味など「おっ」と思える部分もあるにはあったんですけどね。
本筋そのものにしても、主人公を軸にした人間ドラマという意味では綺麗にまとまっていましたし。
ただ、最後にちょっと出てきただけの他の仲間達の存在など、消化不良な部分が多かったのも事実なわけで…
主要メンバーなのにロクに活躍できないままだったキャラもいましたしねぇ。