異世界魔王と召喚少女の奴隷魔術   むらさきゆきや(講談社ラノベ文庫)



やがて世界を震撼させる魔王が絶対的な強さで突き進む異世界冒険譚。
MMORPG、主人公最強、勘違い展開、異世界召喚、と今時の厨二設定満載な作品ですね。
初っ端で奴隷化魔術を跳ね返し、ヒロインよりも上の立場からのスタートと捻りを加えつつも
異世界では圧倒的強さを誇っていたゲーム内の姿&実力そのままと、主人公無双のお膳立ては万全ですし。
それに、中身は一般人なのに、実力と外面は魔王というギャップも実にコメディチックで楽しい。
ヒロインたちの艶姿が拝めるサービスシーンも多く用意されていますし、エンターテイメント性は抜群。
ラブコメ面は九巻終了時点でほぼ成り行き同然ながらもメインヒロイン二人との事実上の婚姻関係が成立。

主人公はある日ゲーム内の姿で異世界へと召喚されてしまったゲーマー。
外見はゲーム内で使用している野性味溢れるイケメンキャラ「ディアヴロ」そっくりの容姿になっている。
異世界生活においては尊大な言動をとっているが、それはあくまで魔王ロールプレイをしているだけであり
元々はただの引きこもりゲーマーだったため、素は平和主義なコミュ障でしかない。
ただ、観察力、分析力、適応力には優れており、チートに油断しない慎重さも持ち合わせている。
リア充を極端に敵視しており、特にゲーム内カップルは見敵必殺レベル。

ヒロインはお転婆な巨乳エルフ姫、無表情クールなネコミミ娘、信心深い聖女、ウチっ娘探索者、自動人形メイド。
他にも、幼女魔王やボクっ娘ギルドマスター、気弱な剣聖など、ヒロインに昇格しそうな女の子がチラホラと。
一番のお気に入りは魔王の魂を身に宿す豹人族の少女、レム・ガレウ。
普段は無表情なのだが、身体が小柄で華奢なことから、それが逆に小動物のように愛らしい。
思慮深く理知的な性格で、クールな態度を崩さず、丁寧語で喋るのが常。
己の抱える事情から、人を頼る術を知らず、強くあらねばと気を張って生きてきたが
それゆえに自分を全部受け入れてくれた主人公に対しては信頼の情を抱いている。
転移や船など、自分の足以外で移動するのが大の苦手。

現時点(十四巻)においての評価はC。
突然降ってわいたチートに頼り切らず、考察や分析、検証をきちんと行う、慎重さのある主人公に感心します。
この手の設定だと、何故か状況把握を疎かにしがちなので、良い意味でのリアリティを感じますね。
ただ、その分対人コミュ力が低すぎ、甘さが目立ちすぎ、チートゆえの制約が多いなどとマイナス点も。
巻を経るごとに苦戦が多くなり、どんどん初期にあった最強要素が薄れてきているのもガッカリですし…
その分、ヒロインたちがそれぞれのポジションでの魅力を発揮して頑張ってくれてはいるんですけどね。
本筋は神の力を手にした敵国の皇帝を撃破するも、主人公は更なる異世界に勇者として召喚されてしまい…?