かくて聖獣は乙女と謳う 陸理明(オーバーラップ文庫)
ユニコーンに呪われた青年と汚れなき乙女たちが戦場で舞う、バトルファンタジーストーリー。
女所帯の部隊に男一人な教官主人公、とパッと見は華やかな設定になってはいるものの
出撃後の生存率一割以下、世界を侵食する脅威、人間の悪意と欲望。と、その内実はかなり暗め。
それだけにヒロインたちが笑いあい、ラブコメに勤しむ日常シーンが映えるわけですが…
肝心の主人公のメンタルが疲弊で擦れきっているため、色恋をする精神的余裕がないのがなぁ。
形としては、ヒロイン側が主人公を攻略する風ですが、突破口が見えなさ過ぎる。
主人公は「ユニコーンの少年騎士」と呼ばれ、伝説にまでなっている教導騎士。
見た目は十代後半だが、特殊な性質の持ち主であることから、実年齢はもっと上。
森育ちな上、十年近く隠遁していたため、肩書きこそ騎士ではあるが、礼儀をあまり気にすることはない。
また、社交性に欠けており、異性とも縁がなかったため、騎士団の少女たちとの交流に苦労している。
押しに弱く、頼みごとをされると断れないタイプ。あと、大の酒好き。
ヒロインは天才なお嬢様、豪傑な女将軍、頭脳明晰な堅物娘、気づかい上手な巨乳隊長。
女所帯という環境的に、上記以外のヒロイン昇格候補も多数と思われる。
一番のお気に入りは西方鎮守聖士女騎士団十三期の隊長を務める少女、ノンナ・アルバイ。
綺麗ではあるのだが、特徴がないととられてしまう顔つきの持ち主。反面、胸の自己主張は激しい。
気遣いができ、調整力に長けているなど、まとめ役向きの能力を有している。
耳がとてもよく、そのせいか美しい音楽や素敵な声を好み、中でも主人公の声は痺れるほど好き。
そのことから主人公の第一の信者を自称しており、基本的に彼の言には従順。
現時点(一巻)においての評価はC。
シリアスとラブコメ、そしてユニコーンたちによるボケのバランスがいいですね。
それぞれがストーリーを軸に絡み合っているので、文章の流れに淀みがなく、きちんと緩急があります。
ただ、キャラごとに描写量に差がありすぎ。というか一巻時点では名前すら明かされていないキャラもいるという。
まあ、これに関しては仕方のない面もありますが。いきなり二桁の登場人物が一堂に会してるわけですし。
同じく、主人公も過去が語られていないので、まだ個性が定まっていない感じ。
しかしこの作品、本筋が割と絶望的過ぎである。味方は少数の上新兵ばかりで敵には人間まで混じっている始末。
まだ本格的な戦いすら始まっていないのに、これハッピーエンドに行けるんだろうか。
もうユニコーンたちの残念さが唯一の癒しってレベルなんですけど…