魔剣戦記   藍藤ユウ(オーバーラップ文庫)



異世界軍事シミュレーションゲームの世界に転移した少年が動乱を征する軍師戦記。
合戦そのものは長すぎず短すぎずの描写ながら、むしろその最中、あるいは前後で起こる
個々の人間ドラマを重視する構成になっているタイプの作品ですね。
そのため、読み味はやや重で、爽快感も薄めですが、その分戦記としてのリアリティはしっかり感じられます。
魔剣使いや主人公以外の転移者の存在など、物語を大きく動かす要素もちゃんとありますし。
ラブコメ面は今のところ薄め。というか現状主人公にそんな余裕がないっぽい。

主人公は幹部自衛官となって智謀をふるうことを夢見ていた日本の少年。
武術適正はないが、培った知識は豊富で、軍師としての才に優れている。
しかし、日本で生まれ育ったことと、責任感と感受性が強く、誠実で誰に対しても気持ちを考えられる
優しい性格であることから、人の生死に傷つき、苦しみやすいという二律背反を抱えている。
また、それらの原因から、卑屈な態度をとることが多い。

ヒロインは聡明な王女、男勝りな妹分、僕っ娘副官、忍者幼女。
三巻の時点では特に際立ってお気に入りのヒロインはなし。

現時点(三巻)においての評価はC。
世界観の構築や話の展開の仕方が丁寧で、情報過多になりがちな戦記作品としては読みやすい部類なのですが
それゆえに全体の進行が遅い、というかキャラに重点を置きすぎている感がありますね。
特に主人公がうじうじ悩む描写が多いのが、読む上で大きなフラストレーションになっている感じ。
元々が特殊な事情があるわけでもない現代日本の学生なので、現実的に考えれば仕方なくはあるのですが…
最終目的が天下統一ということを考えると「いいからはよ動け」と思ってしまうのも確かなわけで。
一応二巻である程度は心が定まったようですが、戦乱ゆえの苦悩はまだまだ続くようですし。
ここら辺のリアリティとラノベ的エンターテイメント性のバランスの悪さがどうも読み手を選ぶ感じですね。