できそこないの魔獣錬磨師   見波タクミ(富士見ファンタジア文庫)



最弱の勝利への執念が最強を打ち倒す、モンスタートレーナーバトルストーリー。
ポケモンよろしく、モンスターを使役してのバトルというラノベでは珍しい設定が目をひきます。
しかも主人公のモンスターは最弱のスライム。昨今の主人公最強&チートな風潮に真っ向から反し
レア能力や特別な才能を持たない中、努力と創意工夫と戦術、そして執念で戦う主人公主従が熱い。
あと、スライムのペムペムの愛らしさは清涼剤として文句なしですねw
ラブコメ面は過熱するヒロインたちのアプローチを前に、いよいよ鈍感を言い訳にできなくなった主人公ですが…?

主人公は最弱のモンスターであるスライムを使役する学園唯一のトレーナー。
戦いに対して真剣でまっすぐな性格をしており、弱いものを見過ごせない性分。
また、スライムトレーナーであることを周囲に馬鹿にされているが、卑屈になることなく
弛まぬ努力を続けることができる勝利への貪欲さと気骨を持っている。
修行第一な思考と、自分はモテないという思い込みから、鈍感でデリカシーに欠けるところも。

ヒロインは傲慢不遜なドラゴントレーナー、人気者なウルフトレーナー、婿取り希望のスライムトレーナー。
一番のお気に入りはモンスターの料理を作る食育師を目指す少女、アリカ・セクスレン。
可愛さと儚さを兼ね備えた容姿に加え、顔つきとは裏腹な豊満な胸。
純情可憐で献身的な態度、控えめで大人しく、恥ずかしがり屋な性格。更に、料理の腕は一流。
といった要素から、男子からの人気は高く、実際いくつものファンクラブが存在している。
しかし、そんな彼女の目と心を捉えて放さないのは、中等部の頃から主人公ただ一人。

現時点(七巻)においての評価はB。
ジャイアントキリングものに必要なツボをきちんと押さえている、実直で堅実な作品ですね。
強気と勇気を失わず、絶望せず、努力を怠らずに常に勝ちを目指す主人公が実に作風にマッチしています。
ただ、メインヒロインであるエルニアのツンデレウザキャラっぷりがラブコメ的にはマイナス点かと。
高慢、短絡、話が通じない、といった要素は敵役としてならともかく、ヒロインとしては…
セカンドヒロインのアリカが良い娘なだけに、なんでこの娘がメインヒロインなの? という不満を覚えてしまう罠。
巻数を経て挽回はできてきたとは思いますが、スタートダッシュの差をひっくり返せるほどではないですし。
本筋は国際大会の一回戦を勝ち抜くも、その後の襲撃社との戦いで完膚なきまでの敗北を喫した主人公。
立ち塞がる強敵たち、渦巻く陰謀の中、彼は再び立ち上がることができるのか、次巻。