簒奪王のレコンキスタ 森田陽一(GA文庫)
伝説の武器を持つ青年が奏でる、 魔獣も国も討つフォルテッシモ・ファンタジー。
人類に仇なす謎の怪異を退治したり、国家運営に関わったり、世界最強クラスの猛者と戦ったりと
多種多様の役割を主人公がこなしていますが、分類的には異世界召喚+主人公最強系になるかと。
主人公の「平和を目指すため」という方向性にブレがないため、安定した読み味が楽しめます。
ラストは悪を為す敵に対抗するため、主人公は永い時を戦い続ける存在へと変わるのだったエンド。
ラブコメ的には作中描写外でメインヒロインのニーナと結ばれ、後に子供まで生まれてはいるのですが
当の主人公は事実上ヤリ逃げ(その後は他の女とずっと一緒)。普通に最低である。
主人公は六回の世界征服をしている、数多の最強を持つ青年。
複数の異世界での激動の人生経験もあってか、年齢の割に思慮深く、冷静で現実的な決断もできる。
また、権力や名誉に執着せず、贅沢に拒絶反応があるなど、欲があまり強くない。
世界最大規模の帝国の第一王子として生まれながらも、クーデターによって国を滅ぼされた過去から
どのような世界に飛ばされたとしても、平和を目指すことを目的としており、実際それを為せるだけの
実力(世界最強クラスの戦闘力、経験に基づいた内政&経済の知識)を備えている。
ヒロインは生真面目な軍人少女、ポジティブな侍女。
一番のお気に入りは主人公の持つ武器「簒奪王」を本来受け継ぐはずだった少女、ニーナ=フィオリ。
生真面目で何でも真に受けやすく、素直。その上純情で煽り耐性がない。と、からかわれやすい性格をしている。
基本的に努力家で、責任があれば頑張れるタイプであり、実際学校での成績は優秀だったが
それゆえに実戦に慣れておらず、精神的に未熟な部分が大きい。が、同時に伸びしろも高い。
評価はE。
精神肉体両面の完成度の高さと、きちんと地に足がついた考え方&行動の主人公が好印象でしたが
彼に安定感がありすぎたがゆえに、メリハリに欠ける平坦な文章になっていたのがマイナス点。
ヒロインたちも最終巻でちょっと活躍を見せた程度で、あとはこれといった存在感を見せないままでしたし…
そういう意味では、最終巻で退場していったサブキャラたちのほうがよっぽど活き活きしていた感が。
本筋は一応形式的には円満風の終わり方でしたが、決してハッピーエンドとは言えないオチだったのが残念。
そもそも、一巻時点では世界を巡った経験や知識、戦闘力を活かした英雄物語になるように見えたのに
二巻以降で全然違う方向性に行ったからなぁ。設定詰め込みすぎ&目的や展開が二転三転だったこともあり
正直読書中は目が滑りまくりでした。一言でまとめるなら「コレジャナイ」に尽きる作品だったかと。