世界の終わりの世界録   細音啓(MF文庫J)



偽英勇の少年と伝説の邂逅からはじまる、世界録をめぐる旅の物語。
人間、天使、魔族、精霊などの様々な種族が生きる世界、英勇の伝説と再来、大いなる謎と脅威。
と、実に正統派な王道ハイ・ファンタジー世界観と設定がワクワク感を与えてくれます。
落ちこぼれから這い上がって英勇への道を歩んでいく、という成長物語も浪漫心をくすぐりますしね。
ラストは世界に終焉をもたらさんとするラスボスを仲間たちとともに撃破し、世界に平穏が取り戻され
そして、少年は竜と天使と悪魔と精霊を引き連れて、旅の続きへ―――エンド。

主人公は伝説の英勇に生き写しの容姿ながら、剣才に恵まれず「偽英勇」とバカにされている少年。
周囲からの不当な嘲笑や侮蔑にも負けず、努力を続けられるまっすぐでひたむきな向上心と
どんな絶望的な状況でも諦めず、状況を打開せんとする前向きな意志の強さを併せ持つ。
また、嘘がつけない素直さや、間違っていることを見過ごせない正義感の持ち主でもある。

ヒロインは最強の竜姫、天界の大天使、冥界の主たる元魔王。
特に際立ってお気に入りのヒロインはなし。

評価はB。
これぞ正統派ファンタジー! と言うべき壮大で幻想的な世界観に圧倒されました。
毎巻大きく動く展開は見応え抜群で、キャラそれぞれに役割がちゃんとあって読みやすいのも良かったです。
世界最上位の猛者たちについていくべく必死に努力&奮闘し、成長していく主人公は応援のし甲斐がありましたし
そんな彼を姉、あるいは教師的な目線で見守る三人のヒロインたちとの交流も、良い雰囲気が出ていたかと。
旅の最中、過去の英勇の代わりではなく、未来の英勇たる唯一無二の存在感を発揮する主人公に
徐々に一人の女としての好意を向けはじめるそれぞれのヒロインとの関係の変化もニヤニヤできましたしね。
本筋は旅の先々で徐々に明かされていく謎、時として立ちはだかり、時として共闘を繰り広げる強者たち。
終盤のボスラッシュ、今までの旅の全てを込めたラストバトル、と骨太かつ王道なストーリー展開が見事の一言。
余韻たっぷりな最後の締めも素晴らしかったですし、できることなら是非また彼らの冒険を読んでみたいところ。
あえて不満をあげるとすれば恋愛要素の少なさですが、そこに力を入れる作風じゃないからこれは致し方なし。