彼女が仲間になりたそうにこちらを見ている 内山靖二郎(MF文庫J)
ゲーム由来の能力者が集まる都市を舞台にした、新世代ゲーマー異能アクションストーリー。
当作品の目玉と思われるゲーム由来の異能を使ったバトルは、斬新さと物珍しさ。
そして元ネタの懐かしさが相まって、中々読み応えがあり面白いです。
反面、タイトルを含めたコミカルな空気と、内容のシリアスさがイマイチ噛み合っていない印象も。
ラストは失った大切な少女を取り戻し、世界を改変せんとするラスボスを倒してのハッピーエンド。
ラブコメ的には、主人公を巡る恋の戦いはこれからだ風味な感じで終了。
主人公はある日突然拉致され、AP(ゲーム由来の能力者のこと)として戦うことになった少年。
調子に乗りやすく、結構考えなしで動いてしまうところがあり、その上一度何かに気をとられると
他の事が目に入らなくなったりと、近視眼的かつ自己中心的な面が目立つが
基本的にまっすぐな気質で、為すべきことを躊躇しない強さを持っている。
また、悪いと思えば素直に自分の非を認められるなど、決して意固地でもない。
ヒロインは大人気アイドル、癒し系お嬢様、侍気質風紀委員、小悪魔な妹分、シスコン理事長。
一番のお気に入りはワイハン(モンハンの改変名と思われる)由来の能力者、美甘天衣。
姉に過保護に育てられてきたため、カフェで注文をしたことすらないレベルの箱入り娘。
誰にでも礼儀正しく、大人しく控えめで恥ずかしがりやな性格をしているものの
それと同時に、姉のために頑張れる優しさと、自分の決めた事を貫く強さを兼ね備えている。
評価はC。
いきなりのメインヒロインの死亡退場や、主人公の記憶の謎など、掴みは上々。
話の展開やバトルのテンポもスピード感があり、一気に読み進めることができました。
ただ、所々展開が性急すぎて、キャラの掘り下げを筆頭とした土台作りがイマイチできていなかった感も。
ストーリー面に関しては、やるべきことは全て消化され、綺麗に纏まっていたのですが…
あと、不満が残るのは、やはりメインヒロインである美優が序盤から終盤まで死にっぱなしだったせいで
ラブコメパートに実質的な制限がかかり、ほとんど進行がなかった点でしょうか。
そういう意味では、シリアス要素一切なしのアフターストーリーを読んでみたい作品ではあったかと。
折角の特殊バトルなのだから、もっと色んな元ネタのゲームでのバトルを見てみたかったというのもありますしね。
……というか、この作品、色んな意味でタイトルミスをしている気がします。