東京聖塔   雨野智晴(MF文庫J)



攻略者のいかなる願いも叶えてくれる塔に挑む、ネイキッドソードアクションストーリー。
分類的にはファンタジー系ダンジョン攻略ものですね。ベースとなる舞台は現代日本準拠ですが。
ゲーム要素が濃いシステムになっており、それだけにワクワク感が強い世界観ではあるものの
仮想現実ではないので当然死が身近にあり、死亡率も高い設定なので緊迫感が結構あります。
ですが、主人公の脱ぎまくり特性やダンボール装備がシリアス一本調子になりがちな空気を中和し
コミカルな雰囲気を作り出しているので、暗さだけを感じることはありません。
ラストは望んだ世界を掴み取り、メインヒロインの祇王寺葉桜と結ばれての全裸(笑)ハッピーエンド。

主人公は余命幾ばくもない妹を救うために、命がけで塔に挑む少年。
正義感と責任感が強く、実直で熱血なところがあり、世間体や保身ではなく自分が正しいと思う行為に
最優先の順位をつけてしまうため、自然と損な生き方をしてしまうタイプ。
また、純粋で素直、悪く言えば抜けたところのあるアホな性格をしており
異性に対し、ストレートな口説き文句ともとれる台詞を発することも。
手に入れた能力が切欠となり露出に抵抗がなくなったのか、何故かやたらと脱ぎたがる。

ヒロインは剣聖な生徒会長、薄幸のブラコン妹、恋慕一途な同級生。
一番のお気に入りは聖塔にて「剣聖」の名を誇るトップ塔覇士、祇王寺葉桜。
主人公の通う学校の生徒会長を務めており、成績優秀、運動神経抜群、品行方正で公明正大。
真面目で勤勉、誰にでも優しく、自分に厳しい完璧人間。
というのが周囲からの評価であり、塔覇士としての知名度もあわせて、その人気は絶大。
しかしそれはあくまで本人の努力と演技の賜物で、素は負けず嫌いで子供っぽいところがあり
異性にも年齢相応に興味があったりと思春期の女の子らしいところも。

評価はC。
願いを叶えてくれる塔のダンジョン、という夢と浪漫に溢れる設定にハートを捕まれました。
無茶こそするものの、まっすぐで気持ちの良い、そして愉快な主人公のキャラも際立っていましたし
ヒロインたちもこれといった悪印象のない、安定した可愛さがあったかと。
肝心の本筋は裏技を使ってのダンジョンクリアと、打ち切り&駆け足なオチになってしまったのが残念。
一番盛り上がるべきラスボス戦もかなりあっさりでしたし、肝心のダンジョンの謎も伏せられたままという。
まあ、主人公が望みを叶えるまでの物語という解釈でなら、割と綺麗にまとまっていたとは思いますが。
けどやっぱりジックリ巻数をかけての正規クリアが見たかったなぁ…