そして不滅の神域封剣   真崎まさむね(MF文庫J)



過去の事故が原因で特殊な身体能力を得てしまった少年の異世界学園バトルアクション。
正に異世界召喚&学園バトルファンタジーのお手本といった感じの作品ですね。
キャラ配置、全体の流れと展開、お約束イベントの登場頻度。全てが手堅く直球で作られています。
ただ、それだけに安定感はあっても、インパクトやオリジナリティに欠ける印象も。
ラストは世界は救われ、そして英雄となった少年は大切な人たちの待つ世界へ帰還を果たし―――エンド。
ラブコメ的にはメインヒロインの咲耶が優勢っぽい扱いながらも、決着つかずで終了。

主人公はある日突然異世界に召喚されてしまった高校生の少年。
天涯孤独の身。しかも人間離れした身体能力を持っていたがために
無気力な日々を過ごしていたが、地球の常識が通じない異世界で生の輝きを取り戻した。
死んだ祖父を尊敬しており、その教えを事あるごとに口に出し、守ろうと努めている。
なんでもできるがゆえに、できないと言われたり危機的状況に陥ると逆に燃えるタイプ。
普段はマイペースで自分の意思がしっかりしているが、場の空気に流されやすい一面も。

ヒロインは責任感の強いツンデレ姫、マニュアル信者少女、無口無表情のクール娘、ツインテールドジっ娘。
あと、サブキャラ扱いながら小動物系少女、カレー推し娘、妄想たくまし娘、ですわ貴族の四人娘も。
一番のお気に入りはゲルツ(ドイツがモデルと思われる)所属の少女、ノエル・リーヴィン。
マニュアル信者にして規則第一の合理主義者。性格もその信条通りクールで堅物。
しかし私情がないわけではなく、羞恥心も恩義を感じる心もちゃんと持っている。
主人公を取り込むことを命じられて(+自身の好意)おり、国の上層部会議によって決められた
明らかに頭のおかしい恋愛マニュアルを駆使して主人公に迫ってくるのがお約束。

評価はC。
やや露骨さこそあるものの、読み手の期待にキッチリ応える王道さと爽快感のある展開は文句なし。
特に、ラストバトル一連の流れは古き良き少年漫画的熱さがありました。
また、ラブコメパートにおけるヒロインたちのあざといまでの可愛らしさ強調描写も実によかったです。
反面、他の部分が設定倒れになってしまっており、物語としての厚みはイマイチだった印象。
話そのものが小奇麗にまとまっていただけに、余計に細部の拙さが目に付いてしまったというか…
最終巻とかかなり駆け足気味でしたし、もっとドッシリ構えて話を進めて欲しかったですね。
あと、不満な点としてはエピローグの短さですかね。作品のカラーを考えるともっとガッツリやってほしかったです。
というか、サブキャラとはいえ仲の良かったクラスメイト四人娘は出番すらなしとか、取捨選択が極端すぎ。
最後までブレなかったゲルツネタとか、光るものも多かったんですけどね。