ストライク・プリンセス   冬木冬樹(角川スニーカー文庫)



「かわいさ」を武器に異界人と戦う少女たちの飛行戦記バトルアクション。
美少女がバトルスーツを身に纏い、異形の敵と戦いを繰り広げるという戦隊ヒーロー系の設定です。
珍しいのは「男なのに主人公だけがヒロインたちと同じ力を使える」というお約束展開がないところでしょうか。
日常パートの軽さとキャラデザインの可愛らしさに反して、背景は結構重め。
しかしメインヒロインの桜花の存在が見事にシリアスになりがちな空気を中和しているかと。
やはり重度のブラコン妹は大正義ということなのでしょう(ぇ
ラストは戦いの末、世界に平和が訪れ、そして未来へエンド。

主人公は生き別れの妹に連れられて、異界人との戦いの最前線に身を置くことになった少年。
普通の常識人なのだが、周囲の少女たちが常識外れすぎるために、ツッコミ役になることが多い。
押しに弱く、余程無茶な要求をされない限りは、相手の言い分を飲んでしまうタイプ。
正に毒もアクもない主人公といえる。

ヒロインはブラコン妹、孤高クール娘、天然ゆるふわお嬢様、ツンデレツインテ娘、気配り上手少女。
一番のお気に入りは物量制圧重火力型なバトルスタイルの少女、アシュレイ・モーガン。
常に無表情&クールで無愛想。人を寄せ付けない雰囲気を纏っている。
口調も端的で突き放したような言い方が多い。
が、それは決して無感情で無関心というわけではなく、かつての過去からくる怒りと悲しみが
彼女の優しさを覆い隠して見えなくしているだけだったりする。

評価はD。
謎の敵とのド派手な戦い、それぞれの事情を抱えて戦うヒロインたち、美少女たちの中に男一人。
と、掴みはバッチリだったのですが、全体的にメリハリが足りなかった印象。
事は世界規模の危機なのに、大人が一人も出てこないまま話が進み、ヒロインたちだけで全部やってるので
切迫感&危機感がまるで感じられない上、主人公も基本空気なので感情移入がしにくかったです。
肉食系ブラコン妹桜花とのやり取りは面白かったですが、ラブコメ要素もほぼ皆無でしたし。
しかもあからさまな打ち切りのせいで、ヒロインは五人もいるのに主役回はおろか掘り下げすら
ロクされないままだった娘もいるしなぁ。主人公も戦闘参加がなかったため、ひたすら影が薄かったですし。
ちゃんと段階を踏んでいけば面白くなりそうな感じだっただけに、残念。