この素晴らしい世界に祝福を!   暁なつめ(角川スニーカー文庫)



元ひきこもりの少年と残念女神を中心にした残念愉快な仲間たちによる異世界コメディー冒険譚。
最終目標として魔王討伐が設定されてはいるものの、シリアス要素や鬱展開はほぼ皆無。
冒険よりも衣食住や平穏に重きを置く日々を過ごし、しかし意図せず大きな騒動に巻き込まれてしまい
結果として大戦果をあげてしまう、というコメディタッチな雰囲気で毎巻ゆるゆる能天気に進行する感じですね。
ラストは魔王を倒した少年は、仲間たちと共にまたドタバタな異世界生活へと戻るのだったエンド。
ラブコメ的には決着つかずで終了。まあ、将来的にめぐみんエンドになるのはほぼ間違いないのでしょうが。

主人公はたまたま外出した日に交通事故(?)で死亡し、女神の導きで異世界転生することになった少年。
元々はゲームやアニメ、漫画が好きな引きこもりであり、そのせいか発想がゲーム脳気味。
が、その割にはコミュ力はかなり高く、口もよく回る。また、欲望に素直で、調子に乗りやすい性格をしている。
向上心や英雄志向がないわけではないのだが、どちらかというと安定に重きを置くタイプ。
冒険者としては観察力&発想力が高く、力押しよりも機転を利かせたり姑息な手段で勝利を得ることが得意。

ヒロインは駄女神、中二病な魔法使い、ドMな女騎士。サブに正統派ヒロインな女神、妹分な王女様なども。
一番のお気に入りはドMな防御専門の騎士、ダクネス。
硬派を装っているが、実は重度のMで、敵から攻撃されることを一種のプレイとして楽しんでいる。
そのため、攻撃面はからっきしではあるものの、防御に関してだけはかなりの実力者。
世間知らずであったり、流されやすかったりととにかく隙が多いのだが、結構頑固なところも。
また、自分には似合わないといいながらも、実は可愛い系の服やぬいぐるみが好きだったりする。
その素性は大貴族の娘であり、ダクネスは偽名で本名はララティーナ。

評価はA。
どんな時でもノリよく軽い掛け合いを忘れない作風は、コメディものとしてほぼ満点の出来だと思います。
不慮の事故で死亡⇒神様に特典をもらって異世界転生、というネット小説の王道パターンを行きながらも
転生後の世界での生き方は微妙にお約束を外す、という変化球進行も新鮮味がありましたし。
また、主人公が良くも悪くも頭を使うタイプなので無駄なタメが少なくフラストレーションがたまらないのもグッド。
ヒロインたちが個性派揃い過ぎて、ラブコメ要素が薄くなりがちなのが難点と言えば難点でしたが。
本筋は最後の最後まで非王道にして邪道を突き進みながらも、魔王討伐達成など、結果だけ見ると王道という
独特の空気感がなんともいえない、愉快痛快な物語が読んでいて実に楽しかったです。
いくつか伏線や謎が残っているので、今後出ると思われる後日談が楽しみなところ。