ラエティティア覇竜戦記   すえばしけん(HJ文庫)



五つの国がそれぞれ神王という存在を擁立し、大陸の覇権を求めて争う異世界ファンタジー戦記。
国同士の戦争という形にはなっているものの、基本的には将の一騎打ちや大軍同士のぶつかり合いよりも
各国の重要キャラ同士の駆け引きに戦局が左右されるタイプの作品ですね。
勝負事に強いギャンブラーという異端の設定持ちの主人公が、実に雰囲気にマッチしています。
ラストは俺たちの戦いはこれからだエンド。あと、ラブコメ的にはほとんど動きのないまま終了。

主人公は神王不在のラウルス国に降臨した偽神王の青年。
弁が立ち、機転が利き、精神的な揺さぶりに長けているなど、上に立つ者としての能力は高い。
ただ、やる気を出した時とそうでない時の落差が大きいため
普段は無気力な表情と目つきの悪さから、ただのゴロツキにしか見えなったりする。
また、傲慢不遜で図々しく軽薄、勝負事に目がない。と、普段の性格面ではかなりの問題人物。
しかしその本質は、賭けを嫌い、極力運任せを避ける。だからこその優秀な勝負師。

ヒロインは腹黒な祭司長、元奴隷な従者娘。
特に際立ってお気に入りのヒロインはなし。

評価はC。
まだ謎や倒すべき敵がかなり残っている状態での打ち切りエンド。個人的には非常に残念な結果でした。
豪胆で積極性がありストレスを感じさせない主人公、適切なペースでの情報開示、伏線の利用の上手さ。
神への叛逆が目標というスケールの大きさ、スピーディーなペース進行、一発逆転の展開。
一つの作品としての完成度という点では、かなり優れた作品だったと思うのですが…
ラブコメやバトルといった、目を惹くわかりやすい華が足りなかったということなのでしょうか?
二巻クライマックスで炸裂した主人公のペテンとか、かなり痛快だったんですけどねぇ。