聖煉の剣姫と墜ちた竜の帝国 瀬尾つかさ(一迅社文庫)
六十年周期で赤い月からやってくる魔王が存在する世界を舞台にした本格ハイ・ファンタジー。
お姫様、竜、エルフ、魔王、魔法、ダンジョン探索とファンタジー御用達の要素が、ありきたりすぎないように
しかし的確にわかりやすく配置されており、主人公とヒロインにも世界を救うための特別な力があるなど
王道をしっかりと踏まえた、これぞファンタジー! といった感じの作品ですね。
ラストは俺たちの戦い&冒険はこれからだエンド。
ラブコメ的には進展なしで終了。ただ、最後のほうの流れを見るに、ハーレムエンドの可能性は十分っぽい。
主人公は「死を呼ぶ狩人(ペイルライダー)」の異名を持つ、魔獣狩りの達人。
他の人間とは違う容姿と能力を持っていることから、人と関わることを嫌っており、普段は寡黙。
堅苦しいことが苦手で、自身の実力に自信を持っているからこその唯我独尊気質。
更には、名誉欲や金銭欲が皆無なので、本編開始までは若くして世捨て人っぽい生活を送っていた。
ただ、唯一心を許している妹に対してだけは過剰な愛情を向けており、そのシスコンぶりは
彼女の言動ひとつで一喜一憂してしまうほどだったり。
孤独な狩人としての人生が長かったため、対人スキルや勉学の能力は低い。
ヒロインは誇り高い王女、小人族の錬金術師、聡明でキツめな妹、ぼっち系お嬢様。
一番のお気に入りはくるくる巻き毛が特徴的な侯爵家三女のお嬢様、イルミナ・アラネ・クリュシタァル。
学年三位の成績を誇る才女で、容姿端麗、スタイルも抜群、立ち振る舞いも上品と正に絵に描いたようなお嬢様。
また、人にモノを教えるのが得意、観察眼に長けているなど、教師能力が高い。
しかし、自分に自信がなく、その上対人関係に不器用な性質なため、友人は少なかったりする。
男女関係においてはかなりの純情少女だが、思い込んだら激しく一途なタイプ。
評価はC。
文章力を含め、全体的な完成度は高く、目立った粗もないと良質の英雄冒険譚を予感させる作品でしたが…
その安定感が裏目に出て、地味な印象が強すぎたせいか二巻で打ち切り完結でした。
キャラの成長を含め、尻上がりに面白さが増すタイプの作品だと感じていただけに、残念無念。
世界観と後の展開への下準備に注力しすぎて、肝心のキャラ立てが疎かになってしまったのが敗因と思われ。
二巻では学園編がはじまり、華やかさが出てきていただけに、打ち切りは性急だったの一言。
というか、伏線消化はおろか、ラスボスは顔見せすらできずに終わりとか…