赫竜王の盟約騎士   手島史詞(一迅社文庫)



竜を斬るほど強くなる竜剣の使い手を養成する学園を舞台にした、竜狩りファンタジー。
純正のファンタジー設定&世界観の内容ではあるものの、復讐が主題になっているためか
親しくなった同級生があっさり死んだりと、ダーク&シビアな色がやや強めです。
ただ、時折挟まれる軽めのお色気イベントや迫力あるバトルシーンの効果もあって
重さや暗さを露骨に感じるほどではない、といったところでしょうか。
ラストは世界を滅ぼさんとする宿敵を倒し、しかし竜を狩る旅は続いていくエンド。
ラブコメ的には三人のヒロインとそれぞれ関係を深めて終了。多分、将来的には全員と結ばれると思われ。

主人公は王家への憎みを隠し、アルキミア竜狩り養成学園に入学した少年。
過去に大切な家族を奪われた恨みから、王家と竜に復讐心を抱いている。
普段は朗らかな優等生を演じてはいるが、その本性は冷酷で計算高く
相棒の咲夜を例外とすれば、自分以外は信じていない。
ただ、根がお人よしであるため、冷酷に徹しきれず感情を乱してしまうこともしばしば。

ヒロインは勝気な残念王女、性悪娘な妹分、寡黙な有翼人。
一番のお気に入りは一族の復讐に燃える有翼人の少女、フルフル。
己の素性を隠すために、普段はローブでその身をすっぽりと隠し、顔も仮面で覆っている。
基本的に寡黙で警戒心が強く、口を開いても抑揚のない淡々とした口調の上
表情を変えることもほとんどないため、感情が読み取りにくいが、天然ボケの気があったり
照れると耳が赤くなったりと、決して無感情というわけではなく、可愛らしい一面もちゃんと持っている。

評価はC。
コンパクトで理解しやすく、完成度の高い世界観。悩みや迷いを抱えながらも、目標に邁進する主要キャラ。
といった全体的なパーツの質の高さと読みやすさは書き慣れている感があり、流石の一言。
ただ、設定の重さが前提としてあるがゆえに、コメディ描写が若干全体のバランスを悪くしていた気も。
あと、折角の学園ものなのに、ほとんど学園生活描写がなく、遠征ばっかりだったのも残念なところ。
本筋は結局復讐を捨てるという形で決着したわけですが、個人的には初志貫徹してほしかったですね。
動機は正当、努力や執念も十分。実際、一巻開始時点では復讐への確固たる意志の強さが見えていただけに
本編中、仲間が出来たことでどんどん甘い考え方になっていく姿は、正道に戻っていく安堵感よりも
その程度で絆されるの? という納得のいかなさと失望感のほうが強かった印象。
展開に対する説得力が足りず、結果として復讐という主題を持て余してしまった作品といった感じでしょうか。
ラストバトルの盛り上がりや話の締め方そのものは文句なしだったんですけどね。