きんいろカルテット! 遊歩新夢(オーバーラップ文庫)
四人の少女が奏でる、心に響く青春音楽ストーリー。
ファンタジー要素や現実離れしすぎな突飛設定などは一切ない、等身大の正統派青春謳歌物語ですね。
中学生の少女たちが主役ということで、良い意味での青臭い情熱が前面に出ており
吹奏楽という文化系の題材にもかかわらず、どこかスポ魂的な熱さと爽やかさがあります。
ラブコメ面に関しては、主人公が大学生の男ということもあり、双方向の恋愛というよりも
ヒロイン側のそれぞれのスタンスに沿った甘酸っぱさや初々しさの描写が重視されている感じでしょうか。
ラスト(第一部)はそして二年後、皆それぞれの未来へ羽ばたいていくエンド。
ラブコメ的には複数のヒロインから想いを寄せられるも、結論先延ばしで終了。
主人公は中学生の少女たちを教え導くことになった大学生のユーフォニアム奏者。
奏者としては、高校時代に国際コンクールで二位を獲得するほどの腕前。
基本的に気にしない性格で、年齢の割に落ち着き、ともすれば老成気味なところがある。
また、極度の音楽バカであり、流行やファッションに疎く、恋愛も二の次と考えているため
事が音楽関係になると、異性に対しても大胆な言動を取ることもしばしば。
なお、夢中になると周りが見えなくなるタイプでもある。
ヒロインは真面目なユーフォニアム、関西弁のテナーホーン、積極的な副部長、ボーイッシュなエスバス。
サブに元気娘なコルネット、大人しめなコルネット、勝気なトロンボーン、謎めいた部長なども。
一番のお気に入りは主人公の亡き親友の妹なユーフォニアム奏者、山本菜珠沙。
清楚な雰囲気を持ち、少し天然かつドジっ娘なところありと保護欲をかきたてられるタイプの少女。
また、基本的に折り目正しく真面目な性格で、頑張り屋。動揺すると「んああ」と悲鳴をあげる癖(?)持ち。
評価はB。
設定からして色物かなと思いきや、かなり本格的な音楽作品に仕上がっていた印象。
反面、音楽パートでは専門用語の連続なので、素人には何が何なのか理解しにくいのが難点でした。
それでも文章から伝わってくる、演奏の表現力と凄みは流石書き手が現役のプロ奏者だなぁと感心しきりでしたが。
各巻クライマックスの盛り上げ方も毎回巧みで圧巻でしたしね。
キャラに関しても、ヒロインは子供から脱皮しようとしている思春期の女の子が可愛く丁寧に描かれており
主人公も嫌味のない落ち着きのある性格と、時折発揮する非凡な実力が存在感を醸し出していました。
ただ、日本音楽業界の悪い側面がことあるごとに強調されていたのが、清流の中の濁りになっていたかな、と。
一応完結ではなく、第一部完とのことなので、是非第二部のイギリス編をやってもらいたいですね。