俺がヒロインを助けすぎて世界がリトル黙示録!?   なめこ印(HJ文庫)



色んな事件に巻き込まれるフラグ体質が開花した主人公が、多くの世界とヒロインを救っていく物語。
多数のヒロインの登場が前提になっている設定が素晴らしい。話の方針もストレートでわかりやすいですし。
異なる世界の技術や力、法則を持ち込んで他の世界を救うというのも捻りと爽快感があってグッド。
巻を経るごとに一人一人の描写密度が薄れるというヒロイン多数作品ゆえの欠点もありますが…
これは仕方ないと割り切るしかないですね。一応巻ごとに人数絞ったりと色々調整はされていますし。
ラストは世界の命運がかかった「女神の物語」を無事に解決し、そして今日も少年の物語は続いていくエンド。
ラブコメ的には決着も進展もないどころか、ほとんど言及されないまま終了。

主人公は誕生日と共に巻き込まれフラグ体質に目覚めた高校生の少年。
容姿・頭脳・運動能力と全てのスペックが平凡。普通&平穏であることを望み、目立つことを避けているが
己の体質のためにその願いは叶えられず、いつも己の境遇を嘆いている。
鈍感かつ優柔不断で女性の扱いを苦手としてはいるものの、責任感が強く、一度関わってしまったことには
最後まで付き合おうとする意志の強さがあるため、深く関わった異性からは好かれやすい。
なお、巻を経るごとにヒロインが増えているせいで、周囲からは何股もかけている問題児と見られていたりする。

ヒロインは大魔法の後継者な幼馴染、宇宙人のお嬢様、異世界の魔術師、地底人、食堂の看板娘、伝説の獣。
ボクっ娘な親戚、吸血鬼、元ホムンクルス、トレジャーハンター、人魚姫、海賊娘、天才科学者。
人見知りな先輩、独眼生徒会長、アイドル歌手、元勇者、風の精霊、超能力者、猫又、宇宙人の特撮監督。
正義のヒロイン、愛と情熱の天使、、エクソシスト、森の妖精、怪盗、アトランティスの王女、侍娘。
言霊使い、ゲーム世界の戦士、未来から来た人工生命体な姉妹。
一番のお気に入りは黒髪ロングなクールビューティー幼馴染の大友皐月。
森羅の大魔法というとんでもない価値のある魔法の後継者で、そのために他の魔法使いから狙われる身。
主人公と一緒に過ごした年数だけならヒロイン中一番だが、奥手な性格ゆえに仲はまるで進展せず。
しかしライバルは増える一方。不憫すぎる、でもそこがいい。ちなみに幽霊と虫が苦手。
最近は如何にして周囲にばれない様にお弁当にハートマークを入れるかで悩んでいるらしい。

評価はB。
世界の危機=主人公を巡る修羅場というスケールとハッタリがインパクト抜群で面白かったです。
主人公がヒロインたちの物語を勇気と機転で救っていく流れも、ヒーロー物語らしくて気持ちよかったですね。
複数ヒロインの同時攻略という構成上、毎回スピード展開になりがちではありましたが、どのエピソードも
ギリギリ破綻なくコンパクトに収まっており、必ずハッピーエンドでしめられていたので読後感もバッチリでした。
本筋は創世の女神だの世界の消滅を賭けた戦いだの、最終的な風呂敷の広げっぷりが凄かったですが
話としては綺麗に纏まっていましたし、全ヒロイン大集合なラストバトルの盛り上がりも申し分なかったです。
いつもヒロインたちの物語に巻き込まれ続けてきた主人公が、ヒロインたちを巻き込んだことが最後の決め手
というのも納得のアンサーでしたし。まあ、それだけに最後のオチにはガッカリせざるを得なかったですが。
元々は「ヒロインたちによる主人公争奪戦な大戦争が未来で起きるからどうにかしろ」って話なのに
ある意味全ての元凶ともいえる部分であるラブコメの決着を完全スルーのまま終わるとか…
結局主人公は恋愛方面だけは全く成長しないままでしたってことだもんなぁ。