忘却剣士の聖刃詩篇   長物守(GA文庫)



過去と現世が響き合う、壮大な学園バトルクロニクルストーリー。
学内ランキング&バトル、ダンジョン攻略、蠢く世界を揺るがすレベルの謎の敵対者。
と、要素だけ切り出してみるとよくある感じの作品ですが、主人公が良いキャラをしているのと
地の文の主観がヒロインのティスターであるという点が読み味に新鮮さを与えてくれていますね。
主人公が美形で強者、物怖じしない性格ということで結構モテモテ状態なのもハーレムスキー的にグッド。
ラストは迫る帝国の脅威は人知れず時の最果てへと消し去られ、そして新たな世界で聖刃詩篇は歌われるエンド。
ラブコメ的にはメインヒロインのティスターが優勢ではあったものの、確定的な決着はつかずで終了

主人公は失った記憶を取り戻すべく「抜く」ことのできる女の子を捜し求める少年。
黙っていれば常に平然とした無表情ではあるものの知的で精悍、凛々しくクールな美少年。
しかし口を開けば平然と無自覚のセクハラ言動を行い、性格も無邪気で好奇心が強く、子供っぽい。
また、尊大な口調で、記憶喪失であるため一般常識も皆無なのだが、礼儀はしっかりしており
自分に正直であけすけで自分の名声にも興味がないなど、憎めないキャラをしている。

ヒロインは明朗快活な剣士、その妹なエリート騎士、飛び級幻獣使い。
あと何人かヒロイン昇格候補っぽい女の子がいたものの、至らないまま本編は完結、残念。
一番のお気に入りは学内ランキング十位のエリート少女、リタリー=カルブルヌス。
氷柩公の異名を持っており、その身に纏う空気も異名通り怜悧かつ清廉潔白で、口調も平坦で無感情。
それは姉であるティスターに対しても変わらないが、実際は大の姉好きだったりする。
幼い頃から名家の家名を背負うべく英才教育を叩き込まれており、そのため気位が高く
男女関係の色恋沙汰に関してはかなり疎く、そして過敏。

評価はC。
構成そのものに目新しいものはありませんが、主人公を筆頭に、キャラが上手くできていた印象。
ただ、記憶喪失という都合上仕方ないにしろ、常に主観がヒロイン側にあったため
ヒロインがいないところでの主人公の行動が描写されず、感情移入しにくかったのが難点だったかな、と。
とはいえ、ティスターのキャラの良さもあり、読みやすさという点については問題なかったのですが。
本筋に関しては、二巻打ち切りということで最後はかなり強引かつ性急な展開ではあったものの
一応話としては区切りが付く形だったので、読了感はそれほど悪くなかったですね。
勿論、未登場の上位ランカーや、続いていればヒロインに昇格していたであろう女の子たちの存在など
面白くなりそうな要素が多数残ったまま終わったのは残念すぎる、という点も事実なのですが。