まちがい英雄の異世界召喚 河端ジュン一(富士見ファンタジア文庫)
恋する幼馴染のために、戦いに身を投じる主人公の異世界バトルファンタジー。
大雑把に言えば、異世界召喚された英雄たちによるバトルゲーム! な感じの作品ですが
明確な目的が最初に提示され、主人公らの強い動機になっているのはわかりやすくていいですね。
まあ、最終的にはルールごと色々ちゃぶ台返しされましたが。
ラストは世界を縛るシステムは消え、英雄たちは元の世界で再び生きていくエンド。
ラブコメ的には、物語は幼馴染のサクラが、実利はメインヒロインのユーナがゲットする形で終了。
主人公は恋する幼馴染と結ばれない運命を打破すべく戦う高校生。
死線を呼び込み、死線に瀕するたびに身体能力が跳ね上がるという運命を背負っており
そのため、若年にして異世界を含めた世界最強クラスの強さを得ている。
当然、周囲からは浮きまくっており、そのため対人メンタルは弱め。
しかし、心底惚れている幼馴染のサクラのために発揮される人並みはずれた努力と根性は
およそラノベ界でも最高レベルのものといっても過言ではない。
とはいえ、年頃の少年らしく他の美少女に目を奪われることもしばしばだったり。
ヒロインは態度尊大な相棒、天然な戦乙女、和服の刀聖少女、ラスボスな幼馴染。
特に際立ってお気に入りのヒロインはなし。
評価はC。
主人公の行動理念が「愛する幼馴染のため」と単純明快なのが好印象でした。
反面、肝心のメインヒロインが、終わってみれば「別にこの娘いらなかったんじゃね?」な扱いだったのが…
どう見てもストーリー上のヒロインは幼馴染のサクラちゃんでしたし。
第一印象は悪く、その印象を覆すほどのデレを発揮することもなく、最後だけ美味しいところを持っていく。
なまじストーリーがよく纏まっていただけに、その異物感が最後まで払拭されなかったのは残念。
本筋に関しては、異世界召喚、運命改変、正義と悪といった大きなハッタリをかましながらも
それら全てを最後はひとりの少年とひとりの少女の恋物語に着地させることで、綺麗に話を畳めていたかと。
あと、個人的に一番評価したいのは最終巻クライマックスの告白の場面。
壮大な恋物語の最後の締めとして開放されたこのワンシーンの破壊力は、正にこれ以上ないものでした。
三巻という短い巻数でしたが、主人公の感情の溜めは十分でしたしね。