ロムニア帝国興亡記 舞阪洸(富士見ファンタジア文庫)
荒れ狂う帝国を救うべく、逆境から立ち上がった虚け王子の英雄戦記。
能ある鷹は爪を隠す、な主人公が天の時を得たことから飛躍していく戦記物語です。
スタートこそ他の覇を争う候補者たちよりも厳しい状況ではあるものの、主人公自身の能力がかなり高いため
重苦しい展開が少なく、ピンチや苦難をサクサク乗り越えていくのが痛快ですね。
過程が丁寧に細かく描写されているため、結果に対する説得力も十分にありますし。
ただ、落ち着く暇がないからか、ラキスケイベントは多いのにラブコメ描写が薄めなのが残念なところ。
ラストは帝国再統一に向け、俺たちの戦いはこれからだエンド。
ラブコメ的には進展はなく、メインヒロインすら不明のまま終了。後々妻を娶ったのは間違いないようですが…
主人公は周囲からうつけと評されている帝国の第六皇子。
飄々とした言動を崩さず、怠け者な態度を見せることが常だが
それは周囲との軋轢を回避するための処世術であり、その実態は皇帝も認める天才。
聡明で思慮深く、洞察力が高い。忍耐強く、常に自分を戒められる自制心も持っており
何より、適材を適所に配置するという意味での人を見る目は他の追随を許さない。
ただ、本人の自覚なしで女性を誑かしてしまう天然のプレイボーイでもある。
ヒロインは思い込みの激しい親衛隊長、クールな教育官、言葉拙い偵察兵、直情的な中華風娘、腹黒変態侍女。
一番のお気に入りは元山の民な偵察兵、ネムネモ。
基本的に無表情で無愛想、口下手な少女なのだが、好意を寄せる主人公の前では一人の女の子に。
自身の胸が小さいため、ライバルたちの巨乳に敵意を燃やしている。
評価はC。
主人公がスタート時点で戦記系主人公として最高レベルの能力を持っているのが心強かったです。
おかげで「そこはこうしろよ」的もどかしさを感じることが皆無で、スッキリと読めましたし。
反面、最終的な帰結がわかっていたがゆえにカタルシスや緊迫感に欠けるのが難点ではありましたが
主人公最強物語大好きな私としては、それほど気になりはしませんでした。むしろバッチコイ。
本筋は興亡記の前半戦が終わったところでの完結とあからさまな打ち切りだったので正直ガッカリでした。
七巻まで続き、いよいよ一大勢力を築き上げ盛り上がってきただけに、消化不良感が物凄いんですよねぇ。
最近よく見かけるようになった戦記ものの中でも正統派な色が濃かった作品なだけに、非常に残念。