空戦魔導士候補生の教官   諸星悠(富士見ファンタジア文庫)



学園浮遊都市を舞台にした、裏切り者と呼ばれる教官と落ちこぼれ少女たちの快進撃物語。
主人公が年若いながらも教官ポジということで、精神的にも実力的にも余裕があるのがいいですね。
教導をこなしている描写にはシッカリと尺がとられているので、タイトルに偽りなしですし
落ちこぼれ&問題児と言われた面々が花を咲かせて周囲をアッと言わせていく様も爽快感抜群。
ラストは世界の命運をかけた戦いに人類は勝利し、平和への道を歩き出し―――そして半年後。
名もなき英雄となった青年は、教え子たちと再会を果たし、そして高らかに名乗りを上げるのだったエンド。
ラブコメ的には二人のヒロインが告白を決行するも、結論出さずで終了。

主人公は過去に「黒の剣聖」と呼ばれていた元エース。
常に飄々としており、堅苦しいことが苦手で捉えどころがない、マイペースな性格をしている。
能力的には優秀ではあるものの、言動がいい加減な上、目に見える気遣いをしないタイプであり
また、裏表はないが、その分思ったことをストレートに口にしてしまうため、誤解を受けやすい。
しかし、守るべき人、困っている人を見捨てない熱さと、どんな困難にも怯まない不屈の精神を内に秘めており
同時に、強敵との戦いや己の窮地を楽しめる強さを併せ持っている。

ヒロインは勝気な小隊長、小動物系双剣士、ナルシスト狙撃手、ツンデレな後輩、武人な双剣士。
ほんわか幼馴染、誇り高き斧使い。他にもヒロインに昇格しそうなキャラがチラホラ。
一番のお気に入りは「空穿の閃跡」の異名を持つ後輩、ユーリ・フロストル。
律儀で義理堅い性格であり、面倒見がよく、生活力にも長け、色々と頼りになるため周囲からの評判は良好。
が、実は感情の制御が下手で不器用だったり、幼児向けの装飾品を好んでいたりと子供っぽい一面も。
特に、特別な感情を抱いている主人公を前にすると、感情が乱れることが多かったりする。
甘いものが好きで苦いものが苦手。スリーサイズは81/56/85。

評価はB。
大筋のストーリーや、キャラの造形&立ち位置の設定にソツがなく、読みやすさは抜群。
また、肝心の教導パートも、型通りなものだけではなく、ラノベ的に見栄えがよく、楽しめる方法を取りながらも
教え子たちにきちんと大事なものを身につけさせる形になっているのが上手かったですね。
燃えるバトルやヒロインの可愛らしさの描写も含め、読んでいてつまらない部分がほとんどなかったのもグッド。
最初の頃は文章力に難がある感じでしたが、巻を経るごとにそれも減りましたしね。
本筋は誰もが死力を尽くした人類総力戦なラストバトルを筆頭に、十巻超えの物語に相応しい
熱のある少年少女たちの生き様が描かれ続け、最後は正に大団円と言える話の結びになっていたと思います。
ただ、個人的には不満が残った点も。ご都合主義の極みでも、やはり皆の記憶は戻ってほしかったですし
恋愛面のオチにしても、決着つかずなのはともかく、ヒロイン全員に好意の差はほとんどなかったはずなのに
最終的にピックアップされたのは二人だけというのはどうなんだと思いましたね…