この中に1人、妹がいる! 田口一(MF文庫)
大会社の跡継ぎになるために出された最後の条件「伴侶を見つけること」に従い恋人探し。
しかし転校した学校には血の繋がった実の妹がいる、なので彼女だけは恋人にするわけにはいかない!
というまんまタイトル通りのドタバタラブコメです。
着眼点は面白いと思いますが、それゆえに話の流れが限定されてしまった感がありますね。
毎回「妹を名乗る女の子が現れる⇒振り回される⇒正体を突き止める⇒偽者だった」をやってるだけですし。
妹属性持ちの私的に、手にとった時期待していたものとは違うというのが結論でしょうか。
ラストはメインヒロインである鶴眞心乃枝と結ばれ、神凪雅を義妹にしてハッピーエンド。
世界観が現実に即したものである以上仕方ないですが、ハーレムエンドにならなかったのは残念。
主人公は大会社の跡継ぎになるべく頑張る高校二年生の少年。
帝王学を未成熟ながらも修めており、全ての点において能力値はかなり高い。
ただ、性格や態度が明らかに上流階級出身っぽくないのに違和感。
別に庶民として育てられてきたとか片親が庶民だったという設定もなく、実際一巻において
「気品と道徳、人々の代表者として相応しい人格を会得した」とあるのに本編ではその片鱗すら見えない。
その辺の平凡な家庭で暮らしてきた主人公と変わりがなく、ここはこの作品ではマイナスでしかなかったかと。
毎回問題が起きてはアタフタと慌てふためいてるだけだからなぁ…本当に帝王学修めてるのかと。
ヒロインは清純派お嬢様、元気系お嬢様、堅物お嬢様、天然お嬢様、不思議系お嬢様、男装スパイ、演技派はとこ。
舞台が政財界の子息が通う学校なので、基本的にお嬢様ばかり。
の割には悪い意味で世間ズレしているというか、変に積極的な女の子がやたら多い。
一番のお気に入りは生徒会副会長の国立凜香。
堅物な性格で規則に厳しく、思い込みが激しい。反面、何でも一人で抱えてしまいこむ責任感の強いタイプでもある。
登場ヒロインの中では一番お嬢様らしい立ち振る舞いをしており、そこがお気に入りの理由だったり。
評価はE。
一巻の時点で期待していたものと、その後の展開が見事に噛み合わなかったというか…
最後の締めも他キャラの後日談もあわせて綺麗にまとまってはいたものの、辿りつくまでの過程が酷かったですし。
コメディ作品だから、と許すには中途半端にシリアス色が強かった感じなんですよね。
登場人物たちも皆悪い意味で頭が悪すぎというか。
特にマズイのが主人公。設定上優秀であることと、本編におけるマヌケ&お人よしさが全然噛み合ってない。
ヒロインは皆可愛いのが救いではあるのですが、こっちはこっちで皆お嬢様なのにやたら肉食的すぎるし…
あと問題だったのは、メインヒロインの心乃枝に他のヒロインほどの魅力をサッパリ感じなかったこと。
何故主人公は彼女を選んだの?と首を捻らざるをえない。本編でもいきなり告白したようにしか見えなかったですし。
かといって、家の力を使って法律変えて妹とも結婚できるし重婚もOKなハーレムエンド!
にするには主人公の器もヒロイン達の寛容さも世界観のコメディ度も何もかも足りなかったしなぁ。