椎名町先輩の安全日    サイトウケンジ(MF文庫J)



タイトルだけ見ると、どこのエロ小説だよと思わないでもないですが
中身はミステリーあり、異能バトルあり、学園ラブコメありと盛りだくさんな作品です。
少々主人公やヒロインに設定詰め込みすぎな部分もありますが、そこが逆に味を出しているという不思議。
CARNELIANさんの美麗な挿絵効果も合わさったヒロインたちの可憐さも目に嬉しいところ。
ラストは皆と過ごす日常を取り戻し、ラブコメ的には二人とも好きだー! な二股エンド。
他ヒロインも、後々ハーレム入りしそうな感じでしたし、締め方としてはほぼ満点かと。

主人公はいきなり殺されるものの、死んでも生き返る肉体を得て蘇った少年。
殺し屋の家系の生まれであり、物心つく前から殺し屋としての訓練を受けていた。
そのため、人間として当たり前の価値観に触れない幼少期を送っており
母の失踪を機に、二年間の教育を経て人間らしい心を手に入れている。
しかしまだまだ普通の男子高校生としての人格改造は不十分であり、心が揺れ動きやすく
特に性的な方面に関しては動揺しがちなところも。
普段は普通の男子高校生らしい俗物さを見せており、良く言えば紳士、悪く言えばヘタレ。

ヒロインは浮世離れした先輩と白衣な無表情系後輩のダブルヒロイン。
サブに人気者な同級生、凛々しい武人系後輩、快活&内気な姉妹。
一番のお気に入りは、ロードと呼ばれる人外の存在な先輩、椎名町香夜。
小柄ながらも胸は大きく、守ってあげたい系の美少女で、当然のように男子人気は高い。
瞳はいつも何となく眠そうで、感情表現に乏しく、雄弁なタイプでもなく
ちょっと浮世離れした雰囲気がある。あと、実は男(主人公除く)が苦手だったりする。
また、純情かつ無垢であり、曖昧なエッチ的キーワードには疎く、直接表現でないと通じない。

評価はB。
サスペンスと異能バトル、そしてラブコメがバランスよく配分されている作品でした。
設定が少々難解でわかりにくいのが難ではありましたが、本筋は四巻で綺麗に纏まっていたかと。
激動の展開の中で存在感を放つ主人公やヒロインたちの個性も流石の一言でしたし。
ただ、個人的には本筋とは関係の無い学園生活とか、単発の事件話も見てみたかったですね。
そういう、キャラを映えさせるための余話が少なかったのが残念な点だったかな、と。
あと、結局本編に出番がないままだった妹の愛和の件だけは、妹キャラスキーとして断固抗議せざるをえない。