僕と彼女とカノジョとかのじょ   田尾典丈(オーバーラップ文庫)



一人の少女から分裂した三者三様のヒロインたちと過ごす、三位一体ドタバタラブコメ。
イソップ寓話の金の斧よろしく、泉に落ちたヒロインが黒金銀の三人に増えるわけですが…
そんな突飛な設定ではあるものの、全体的な構成は結構堅実な感じです。
ちゃんと筋道が立てられた上で話が進行するので、読んでいて首を捻ることもないですし。
理不尽系ヒロインかと思われたメインヒロインの黒恵にも、きちんと行動の理由付けがありましたしね。
ラストは、不幸な日々は続くけれど、皆が一緒なら幸せですエンド。
ラブコメ的には、四人でずっと一緒なのは確定っぽいので実質的にハーレムエンドと言ってよいかと。

主人公は幼馴染に虐げられる日々を送る、高校生の少年。
身体が小さく気も弱いため、ガラの悪い人間に絡まれやすいタイプ。
また、いつもなよなよした態度なため、女の子に見られることも多い。
それ以外だと、純情で生真面目な気質あり。

ヒロインは姉御肌な幼馴染、分裂した活発な金少女、分裂した大人しい銀少女。
一番のお気に入りは、黒恵から分裂した少女の一人、銀花。
オリジナルである黒恵よりも背が低く、スタイルも貧相。
読書が趣味で、大人しく人見知り。口数も少なく、口を開いても舌足らずで端的な喋り方をする。
いわゆる守ってあげたくなるタイプの女の子。
が、好意を持つ主人公に対してだけは積極的で大胆な言動をとることも。

評価はC。
一発ネタにしかならないはずの設定を三巻まで引っ張り、その上で綺麗に纏めている手腕は流石の一言。
キャラにブレがおきることもなかったですし、掛け合いも自然でテンポがよく、総合的に上手い作品だったなと。
お色気イベントをストーリーに絡めることで、物語の中に必然性を持たせるというあざとい手法にも感心しました。
世界観に少々窮屈さを感じはしましたが…まあ、これはそういう話なんだで済むレベルのことですし。
ただ、ストーリーに関してはもうちょっと遊びが欲しかったというか…
本筋とは関係のないエピソードを作ってヒロイン三人の魅力をもっと掘り下げて欲しかったですね。