異世界因果のトラベローグ   姫ノ木あく(オーバーラップ文庫)



転入生なエルフ少女との出会いから始まる、ドタバタトラベルラブコメディ。
キャラ同士の掛け合いを主軸に、漂う空気がいい感じの作品ですね。
後半、バトルや戦争といった要素がありましたが、不思議と殺伐さは感じませんでしたし。
個人的に評価したいのは、ヒロイン視点の描写もそれなりにあるところでしょうか。
ヒロインたちの一生懸命な気持ちが伝わってきて、凄くほっこりできました。
ラストは世界を救い、再び平和な日常へエンド。
ラブコメ的には決着は付かず、未来に先送りな主人公を巡る恋の戦いはこれからだ、な感じで終了。

主人公は、他人に見えないものが見えてしまう少年。
魔力が見える体質であり、そのことから成長と共に現実的で事なかれ主義に。
ただ、普段からやる気のない態度をとることこそ多いものの、面倒見が良い性格であり
イザという時は人のために身体を張れるヒーロー的気質を持っている。
実は多少どころではないレベルのシスコン。あと、結構スケベで巨乳属性持ち。

ヒロインは異世界から来たエルフ、主人公の実妹ソックリな妹エルフ、明朗快活な幼馴染。
爽やかボクっ娘、天才十歳児、アホの子褐色エルフ。
一番のお気に入りはメインヒロインじゃない幼馴染という敗北必死ポジな少女、椿沢羽澄。
明るく社交的&行動的な性格で、周囲からの人気はそれなりに高い。
成績は良いほうなのだが、頭の回転という意味では結構単純なところがあり、直情的。
主人公が他の女の子と親しくしていると、すぐに焦りと危機感を覚える姿は実に可愛い。
最終巻での自分の気持ちを吐露した時の台詞「……凄まじく好き」は屈指の萌え名言である。

評価はB。
全体的な雰囲気が実に好ましい作品でした。シリアス展開もその空気を壊すほどではなかったですしね。
キャラに関しても、それぞれ応援したくなるような魅力的なヒロインばかりで良かったです。
主人公を中心としたギスギス感の一切ないハーレムコミュニティも素晴らしかったですし。
本筋も、修学旅行⇒異世界転移⇒戦争。という怒涛の流れを見事に三巻で収めた手腕に感心の一言。
ただ、大きなマイナスになるほどではないとはいえ、本筋の設定そのものはイマイチ理解しにくかったのと
一部のキャラの活躍が都合よすぎていた、という点でもう少し巻数増加による積み重ねが欲しかったかな、と。
あと、個人的な意見としては、もう少しラブコメ面に言及をした形で終わってほしかったところ。
ヒロインたちの一生懸命さが見て取れただけに、せめて現状の区切りくらいはつけてほしかったというか…