覚えてないけど、キミが好き   比嘉智康(一迅社文庫)



記憶を失くした主人公と、謎を抱えたヒロインたちのミステリアスラブコメディ。
と思いきや、その実態は普通のラブコメだったりします。
何かとんでもない事実があるように見せかけて、そんなことはなかったぜ!
みたいな、良くできたコントとも言える起承転結が結構楽しい。
登場人物たちの掛け合いも、どこかズレていながらもテンポがよく独特の面白さがありますね。

主人公は両親と記憶を失い、それでも妹と日々を強く生きる少年。
毎朝妹であるひなたに運を吸わせるためにハグをするのが日課。
そのため、ほぼ毎日一日中不運状態であり、それが学内の大多数の人間に嫌われている。
女子からは「超淫獣エロ吉」と呼ばれ、後輩からは「最も先輩と呼びたくない先輩」に選ばれたりも。
しかしそれでも不運イコール不幸じゃない、と妹を恨むことなく守り続けている。
三年前に、親しければ親しい人ほど忘れてしまう記憶喪失に陥ってしまう。
その切欠は、両親を火事で失ったことと、妹に自慰の現場を見られてしまったというもの。
前者もだけど、後者が悲惨すぎる……

ヒロインは迷探偵な元カノ、人気者な妹。
二人とも、その恋心ゆえのぽんこつ具合が見ていて微笑ましくなります。
一番のお気に入りは「毎日誰かの運を吸わなければ生きていけない体質」を持つ妹、小衣ひなた。
普段はやや子供っぽいところと人見知りの気があるものの、いつも天真爛漫で元気な娘。
同年代の女子と比べれば小柄な身体ながらも、胸は大きい。いわゆるロリ巨乳。
更には、校内男子から「カワイイの神様」と称されているほどの愛らしい容姿を持っている。
その人気のほどは、主人公との仲を冷やかされないように校内では疎遠に振舞わなければならないほど。
かなりのブラコンであり、主人公に女の子扱いされると機嫌が良くなり、されないと悪くなる。
慣用句とことわざが弱点。

現時点(二巻)においての評価はB。
同作者の過去作品と同じく、どこか王道を外しながらも魅力的なキャラたちがいいですね。
男気のある主人公と恋に一生懸命なヒロイン、愉快なサブキャラたち。
本筋はやや肩透かしな展開ばかりでしたが、日常における彼らの掛け合いは実に楽しめました。
しかしこの作品、続きが出るのかが気になるところ。
一応まだ謎(妹の特異体質等)は残っていますが、肝心の主人公の記憶が戻っちゃったからなぁ。
これで続いたらタイトル詐欺になってしまうわけで……