聖剣と魔竜の世界　　　サイトウケンジ（オーバーラップ文庫）



美少女たちを聖剣へと変化させ、世界の敵である魔竜と戦う現代バトルアクション＆ラブコメ。
事は世界規模の危機なのに、主要登場人物の掛け合いは和やかというギャップが楽しいです。
魔竜が話の通じない悪党ではなく、きちんと日常パートでは友好的な存在として関わってくるので
いざバトルパートに入った時の非日常への切り替わりが映えていますし。
聖剣も魔竜も見た目人間の美少女ばかりなので多数のヒロイン候補が登場しますし、華やかさも抜群。
設定がそのまま主人公の周りにヒロインが集まる理由付けになっているのが素晴らしい。
ラストは世界を滅ぼさんとするラスボスを救うために神となった主人公に力を合わせたダブルヒロインが勝利。
そしてまた、聖剣と魔竜の世界ははじまるのだったエンド。
ラブコメ的には明確な決着はつかずに終わったものの、将来的なハーレムエンドはほぼ確定の模様。

主人公は聖剣を扱い、魔竜と戦う力を持つ聖剣士の少年。
聖剣を持てば魔竜と渡り合える実力がありながらも、別に世界の平和や人類のために戦っているわけではなく
あくまで身近な人を守ることが第一と、基本的には保身優先のツッコミ上手な平穏主義者。
戦闘者としての基本戦法は情報＆奇策重視の邪道型だが、私人としては家族思いでお人よし。
特に、実妹である灯花に対してはかなりシスコン気味な愛情を注いでいたりする。
お色気イベントに対しては、堂々とストレートかつ正直な反応を返すタイプ。

ヒロインは無表情天然系な魔竜姫、聖剣な健気妹、聖剣な癒し系素直少女、幼女な魔竜、生真面目な魔竜。
サブにクール系ボクっ娘剣士、宿敵な偽姉、純粋無垢な魔竜なども。
一番のお気に入りはＳクラス聖剣な妹、月夜野灯花。
儚げな雰囲気、自己表現が苦手、善良な性格と絵に描いたような守ってあげたくなるタイプの女の子。
あからさまに「兄さん大好き」という感情を表に出すことこそあまりないものの
やきもちを焼いたり、隠し事にすぐに気づいたりと兄を想ってる感が凄く伝わってくる良妹さんでもある。
大好きなものは甘いものとお風呂。

評価はＢ。
世界観や登場人物たちの関係性、伏線の張り方など、総合的に完成度の高い作品でした。
日常パートの空気をそのままバトルパートにも持ち込んでるため、やや緊迫感に欠ける部分こそあるものの
話のバランスが上手く取れているため、設定のスケールの割に内容を理解しやすいのも良かったですし。
また、主人公が最初からかなりの強さを持ち、精神的にも玄人っぽさがあるので安定感があり
ヒロインも皆素直に可愛いと思えるキャラばかりで、とにかく不快に思う要素がないのが素晴らしかったです。
本筋はきちんとタイトルを回収する形で話が纏まっており、文句のない大団円になっていたかと。
特にすべてが収束する最終巻の一連の流れは王道かつ優しい仕上がりで読後感もバッチリでしたし。
欲を言えば平和な世界でのアフターストーリーを読みたいところですが…