浮遊学園のアリス&シャーリー   むらさきゆきや(オーバーラップ文庫)



浮遊学園都市を舞台にした、紅茶とお菓子の学園異能バトルストーリー。
大枠で言えばよくある学園異能バトルものではあるのですが、全体的な雰囲気が少し独特ですね。
メルヘン色が強いというか、幻想という文字にファンタジーというルビをつけたような感じというか。
まあ、主人公とヒロインの一人であるアリスの能力の印象が強いからこその感想なわけですが。
他のキャラの異能や舞台外観は普通によくある感じですし。
ラストはラスボスの暴挙から人々を救い、皆揃ってパーティーだ! エンド。
ラブコメ的には結局進展が一切ないままでの終了でしたが、きっとこの先も三人一緒に過ごしていくのだろうな
と思わせてくれる終わり方でした。でもそれって要は二股ですよねw

主人公は最高レベルの能力者として浮遊学園に転入することになった少年。
物腰穏やかかつ温厚な性格で、やや押しに弱い。
しかし理不尽に立ち向かう芯の強さも兼ね備えており、何気に喧嘩慣れもしている。
そのため、危機的状況に直面しても心は熱く、しかし思考は冷静に。が自然にできるタイプ。
喫茶店やレストランが好きで、紅茶にも拘りがあり、趣味も特技も料理と執事適正が高い。

ヒロインは天真爛漫な幼馴染、物静かな不思議少女。
一番のお気に入りは自身を「世界の王」と称する少女、アリス・クロックハート。
主人公と同じく、最高レベルの能力者であり、その驚異的な力ゆえに周囲からは畏怖されている。
金色の髪に、サファイアの瞳、年齢にそぐわぬ小柄な体躯。
それに加えて常に無表情かつ冷めた態度から、人形然というか浮世離れした印象の少女。
最高能力者ゆえの自負から来る賢さと自尊心の高さを併せ持つという気難しい性格をしているが
不意打ちに弱かったり負けず嫌いであったりと年齢相応なところも。

評価はB。
キャラクターの個性や関係、掛け合いが作品の空気とこれ以上なくマッチしている作品でした。
何よりも、アリス&シャーリーのコンビ、そして彼女たちを繋げる主人公を加えたトリオの魅力は最高の一言。
本筋に関しても、一巻から最終巻までが一つの物語として綺麗に繋がっており、着地も見事と文句なし。
日常パートの和気藹々なほのぼのさも、毎度見ていてほっこり幸せになれました。
あえて不満を挙げるなら、ラブコメ描写が少なさですが…主役三人の関係的に、これは致し方なしだしなぁ。
あとは本筋一辺倒ではなく、日常系の軽い単発ドタバタエピソードとかも挟んで欲しかったくらい?
ちなみに、一番「おおっ」と感心したのは、最後の最後で主人公の能力が大活躍したシーンだったりします。
こんな主人公らしからぬ能力でどうやって活躍するんだよと思っていただけに、あのシーンは正直軽く感動しました。