覇剣の皇姫アルティーナ むらさきゆきや(ファミ通文庫)
読書狂の軍師と第四皇女アルティーナの織り成す、覇道戦記ファンタジー。
中世欧州風の世界が舞台ですが、この手の作品にしては珍しく、魔法やモンスターは存在していません。
なので基本的に戦争はリアル中世に近い感じの人対人の集団戦がメインになっています。
ゆえに、わかりやすい派手さや華々しさにやや欠ける面がありますが、描写があっさりしているというか
血生臭さや重苦しさをあまり感じさせない風になっているため、テンポよく読めるのが良いですね。
戦争そのものよりも、戦乱に生きるキャラクターの活躍を楽しむタイプの作品といった感じでしょうか。
ラブコメ面は十二巻にて遂にヒロインの一人が主人公に告白しましたが結局はぐらかされ進展なし。
主人公は敗戦の責任を負わされて左遷された先で軍師として働くことになってしまった平民の文官。
気弱な性格であり、理屈っぽく回りくどい言い方を好み、とにかく自己評価が低く、心配性。
その上、剣も乗馬もまるでダメで体力も平均以下と軍人にまるで向いていない。
が、読書によって培われた膨大な知識量と発想力からなる智謀は後に魔法使いの異名をとるようになるほど。
また、軍務に熱意こそないものの、力なき者を守るためならば身を挺して動くこともできたりと
軍人としての心構えはかなり高く、信念に命をかけられる心の強さを持っている。
大の読書狂であり、本の内容を語りだすと止まらない。そしてそのせいで話が脱線することもしばしば。
ヒロインは大剣使いのお転婆姫、腹黒メイド、男装騎士、理知的な公爵家次女。
他にも、クールな傭兵軍師など、ヒロインに参入しそうな存在が何人か登場済み。
しかし主人公に初めて告白(というかプロポーズ)したのは蛮族の王(勿論男)だったりする
一番のお気に入りはアルティーナ付きのメイド、クラリス。
公私における態度の差が極端な性格で、気に入った相手には笑顔で冗談や毒舌を言ったりするのだが
公的な場や他人の前では、まるで人形のように動かず話さず笑わずを貫いている。
現時点(十四巻)においての評価はB。
脳筋ながらも人望とカリスマのあるアルティーナと、自己評価が低く慎重派な主人公の二人三脚が
実に上手く噛み合っていていいですね。この二人の頑張りは応援したくなる魅力があります。
戦争の連続でラブコメ描写が少ないのと、主人公の自己評価の低さからの鈍感が気になる点ではありますが…
その分色んな意味でモテモテ(男にも)なので、その辺りの噛み合わなさが結構面白かったりも。
本筋は他国への侵略戦争が順調に進むも、主人公が敵の罠にはまり毒を受けてしまい…?