サイコメ 水城水城(ファミ通文庫)
殺人を犯した少年少女たちを更正させる学院を舞台にしたバイオレンスラブコメディ。
登場人物の大半が殺人犯という、斬新ながらもとんでもない設定の物語です。
当然ヒロインも殺人経験者であり、一見するとただの学園ラブコメに見えますが、内実は真っ黒。
バイオレンス系の描写は控えめではありますが、所々で常軌を逸している点があったりします。
唯一、色々な意味で健全すぎる主人公の姿は熱さと共に、同情の涙を禁じえません。
ラストは無事に学院を退学し、再び表社会で平和に暮らし始めた主人公の前に現れた人影は――エンド。
ラブコメ的にはメインヒロインの氷河煉子と両想いになるも、二人は離れ離れに。
その隙を紅羽鋭利が虎視眈々(他ヒロインは脱落)と狙っている、で終了。
主人公は十二人を殺した殺人鬼という冤罪をかけられた少年。
容姿、成績、運動神経などは普通であるものの、殺傷に関する身体能力は人並外れていて、喧嘩に強い。
が、当人はあくまで人を守るためか、正当防衛でしか手を出さない主義。
とはいえ、客観的には喧嘩三昧の危ない奴でしかないため、周囲の人間からは極度に恐れられていた模様。
反面、殺人者の集まるプルガトリウム更正学院では一躍人気者の座につくことに。
凶器を持った複数の人間に囲まれても平然とできる度胸の持ち主なのだが、殺人者には普通にビビってしまう。
また、年頃の少年らしく、女の子との接近にいちいち反応してしまったりすることも。
ヒロインはガスマスク殺人鬼、殺し屋な殺人鬼、ドジっ娘殺人鬼、サイコパスな先輩、ヤンデレ実妹。
一番のお気に入りは殺せない殺し屋、紅羽鋭利。
常につまらなさそうな態度と眠たげな目をしており、言動は挑発的でマイペース。
外見はスレンダーなスタイルの今風の美少女といった感じであり、暇さえあればネイルアートに勤しんでいる。
意外に初心であったり、お人よしであったり、貧乳であることを気にしていたり、少女趣味であったり。
と意外に可愛らしいところもあるが、料理下手、低学力など普段のクールキャラに反して残念なところも。
評価はC。
奇抜な設定、個性溢れるサイコパスなキャラクターたち、バイオレンスとラブコメのアンバランスな融合。
全てが絶妙に噛み合ってなんともいえない面白さを醸し出している作品でした。
それに、味付けがバイオレンスすぎるだけで、流れそのものは結構王道を行く感じで読みやすかったですし。
主人公が不憫すぎるのと、ヒロインたちが人殺しであることが引っかかる部分ではありましたが…
最終巻でそのどちらにも適度な決着がついていたので不満はほとんど残らなかったですね。
主人公に冤罪被せた諸悪の根源はキッチリ成敗され、ヒロインたちにもそれぞれ見せ場がありましたし。