三千世界の魔王サマ 青弘幸(MF文庫J)
魔王と勘違いされた普通の少年と、次期魔王の少女の織り成すハートフルドタバタラブコメ。
主人公とメインヒロインの構図だけ見るとまんま「中二病でも恋がしたい」なのですが
こちらはヒロインがガチで魔王という超常的存在であり、それ故の齟齬があるのが特徴的でしょうか。
とはいえ、中身はシリアス分薄めなオーソドックスなラノベ的青春ラブコメなので、サクサク読めます。
ラストはすれ違いもあったけれど、リアル中二病な騒がしい日々は続いていくよエンド。
ラブコメ的にはほぼ進展なしのまま終了だったのが残念ですが、元々恋愛押しの作品ではないので仕方なし。
主人公は中二病だった過去を捨て去り、高校デビューを計る少年。
中学時代、重度の中二病であったがために、周囲から孤立し、妹からも嫌われるという
暗黒時代を過ごしてきた経験から、高校では平凡な学生を目指している。
普段は悪目立ちをせず周囲に合わせようとはしているものの、イザという時は己の心に従って
外面をかなぐり捨てて動くことができる度胸と熱さを持っていたりも。
ぼっちだったがゆえに、テンパりやすい性分で、喋れば喋るほど墓穴を掘ってしまうタイプだったりする。
ヒロインは落ちこぼれ次期魔王、中二病嫌いなブラコン妹、百合サキュバス、ニート人魚。
一番のお気に入りは押しかけ弟子な次期魔王、ルリファー・シエル・ド・サクリファイス。
魔王の血筋だからなのか、一人称が「わらわ」であり、時代がかった喋り方をする。
魔法下手、運動能力は絶望的。純情で優しい性格の上、残酷なことや隠し事が苦手。
更に、緊張すると、失敗を恐れるあまりありえないほどのドジになるなど、魔王としては落ちこぼれ。
しかし、何事にもやる気を見せ、一生懸命に頑張ることができる健気さを持っており
他の事で役に立とうと身につけた料理や掃除、裁縫といった家事全般の腕前は一流レベルだったりする。
ちなみに、身体は小柄ながらも胸は大きい、つまりはロリ巨乳。
評価はB。
客観的に見れば「自分の都合で押しかけ、主人公に苦労をかけまくる」という迷惑型ヒロインなのに
愛らしさと健気さで見事にマイナス印象を打ち消しているルリファーがこの作品の全てだったと言えますな。
反面、他のヒロインたちがおまけにしかなっていないというデメリットもありましたが。
あと、主人公の周囲がお人よしで騙されやすいキャラばかりで構成されているので
問題が起きても深刻にならず、最後もスッキリ解決するため、不快さをまったく感じなかったのがいいですね。
ただ、三巻完結のために最終巻は巻き展開すぎたのが不満な点でしょうか。
一応作中でやるべきことは全て消化して、最後も綺麗に纏まってはいたものの
もうちょっと色々なイベントをやって掘り下げをやって欲しかったですね。特にラブコメ方面を。