落第騎士の英雄譚   海空りく(GA文庫)



最底辺から己の力を駆使して成り上がる、学園異能ソードアクションストーリー。
成り上がり物語として、清々しいまでのテンプレ&お約束主体の設定や展開が逆に気持ちのよい作品ですね。
先が読みやすいというデメリットはありますが、変な捻りのない真っ向勝負の燃えるバトル対決で
落として上げるの流れができているので、カタルシスによる爽快感が細かい不満を打ち消してくれます。
特に九巻の大会決勝戦はラノベ史上でも屈指の激熱な名勝負だったかと。
ラストは完全な人類の創造という己の野望のために暗躍していたラスボスを撃破し、ハッピーエンド。
ラブコメ的にはメインヒロインのステラと結ばれ、最後は結婚式を挙げて終了。

主人公は周囲から落ちこぼれと評されながらも、頂点を目指す少年。
能力者としては十年に一人の劣等生レベルであるFランクであり、魔法の才能は皆無。
が、身体能力に優れており、並外れた動体視力や洞察眼を核にした体術や剣術の腕前は一流であり
戦闘力だけで言えば上位ランクの能力者に引けを取らない。
師匠との出会いを切欠に、理不尽を許さず、自分を諦めない強さを身に着けており
また、自分を鍛えることに時間を費やしてきたため、禁欲的で穏やかながらも生真面目な性格をしている。
ただ、虐げられてきた経験から、何もかも許容してしまい、我慢を重ねすぎてしまうところも。

ヒロインはチョロツンデレ皇女様、サブにガチで兄を愛する実妹。
他にも、巻ごとにゲストヒロインのようなネームドキャラは登場しますが、ヒロイン化はしない模様。
一番のお気に入りは、ブラコンでヤンデレな実妹、黒鉄珠雫。
全体的に色素の薄い儚い雰囲気を持つ、一見すれば良家のお嬢様風の少女なのだが
その実態は、老若男女を問わない人嫌いであり、その上で真剣に兄を愛している肉食系ブラコン。
ただ、兄以外の相手でも、自身が認めた相手にはそれなりに地が出る模様。
恥ずかしがりやだった幼少期の名残からか、恥ずかしいことがあると物陰に逃げ込んでしまう癖がある。

評価はB。
こういう努力型の主人公が底辺からスタートして皆に認められていく流れの話は大好物です。
期待を裏切らず、巻を経るごとに、どんどん主人公の評価も話の盛り上がりもうなぎのぼりででしたし。
ただ、ヒロインレースに関しては、一巻にして早くもメインヒロインのステラとの恋人関係が成立してしまったため
以降に登場する魅力的な女の子がゲスト扱いにしかならなかったのが残念なところ。
まあ一人に絞ったことによる、濃密なチャラブも悪くはないですし、ステラも十分可愛くはあったのですが。
本筋は国を守り、敵の野望のために攫われたヒロインを仲間たちと協力して死闘の末に救出。
そして少年は英雄となり、最後は結婚式で締め! と英雄譚としては模範的な最終巻になっていたかと。
ただ、正直なことを言えば、ストーリー&バトルの盛り上がりだけならば物語前半の七星剣武祭のほうが
明らかに上だったため、後半の話は蛇足とまではいかずとも、熱量が持続できていなかったのが残念。