その『ざまぁ』請け負います   初美陽一(富士見ファンタジア文庫)



陰の退職代行が悪を「ざまぁ」して、ヒロインを幸せにする救済ファンタジーストーリー。
大枠としてはお仕事ものというか、ざまぁ執行自体が仕事になっており、短いエピソードが連続する構成。
退職代行という今の時代ならではの業務がメインになっていますが、世界観が剣と魔法のファンタジーということで
お仕事もの感はあまりなく、どちらかというと、悪を断罪する必殺仕事人としての色が濃いです。
悪意や胸糞展開自体を叩き潰すのは主人公ですが、彼自身はあくまで依頼を受けた代行でしかなく
ざまぁの起点となる直接の被害者は各エピソードに登場するヒロインたちですしね。
ラブコメ面は今のところ進展なし。主人公は助けたヒロインたちから好意を抱かれまくりですが…

主人公は裏の顔として陰の退職代行依頼を引き受けている、酒場「灰色の止まり木」のマスター。
クールで落ち着いた性格。常にその瞳は昏く、感情が窺えないまったくの無表情。
昔、悪性の国家上層部に酷使され、果てには先代聖女であった最愛の姉を濡れ衣で殺されている。
そのことから、姉のような優しい人に不幸になってほしくない。邪な思惑で他者を陥れ、踏みにじるような
堕悪から救いたい。優しい人が無為に傷つけられないよう救ってあげたいと考えるようになった。
色恋に関しては極度の鈍感であり、わかりやすいアプローチをされても完全に無反応。
料理が好きで、実際の腕前も一級品(酒場での料理は彼が作っている)。

ヒロインはドジっ娘ウェイトレス、クールなウェイトレス、内気な付与術師、実直なダークエルフ、清廉な聖女。
一巻の時点では特に際立ってお気に入りのヒロインはなし。

現時点(一巻)においての評価はC。
ざまぁという創作での流行と、退職代行という現実の流行の組み合わせを見事にマッチさせている作品。
世界観がファンタジーであるがゆえに、成敗される側の悪辣さ、同情の余地のなさがわかりやすく
断罪が達成され、不遇だったヒロインが救われる時のスカッと爽快な「ざまぁ」感は申し分なし。
悪人は己の所業を裁かれ、頑張っている人間は報われる。勧善懲悪はやはり読んでいて気持ち良い。
仕事として行うざまぁだからこそ、行き当たりばったりではない、入念な準備と立ち回りを見せてくれるので
カタルシスを感じるまでの過程である溜めの部分でもワクワク感を楽しめますしね。
本筋は不遇に苦しんでいた三人のヒロインを助け、そしてまた酒場に新たな救いを求める人が。