ファンタジー何とか 東中島北男(オーバーラップ文庫)
原作再現のため伝説の悪役を目指す、爽快ループファンタジーストーリー。
大枠としては異世界(ゲーム世界)転生ものですね。特徴的なのは、主人公の原作知識があやふやで
「ゲルド(主人公が憑依したキャラ)はヒロインを誘拐し破滅を迎える」くらいしか覚えておらず
そして、破滅回避に成功したにもかかわらず、三年周期のタイムループに巻き込まれてしまっていること。
内容自体はありがちな悪役転生ものなのですが、この二点が新鮮な読み味を作り出しています。
ラブコメ面は本来なら嫌われてしかるべきはずの原作ヒロイン・ミリーに好かれてしまった主人公ですが、さて。
主人公は現代日本で命を落とす直前だった男の魂が憑依した、とあるRPGの悪役キャラ。
突然巻き込まれたタイムループから脱出するため、原作再現と破滅回避に奔走することに。
暢気で楽天的、流されやすい性格でかなり間が抜けているバカ。
ループを繰り返した結果、どうせループするだけだからと死ぬことでさえもそれほど恐れないようになったが
その一方で、考えなしにとりあえず行動してしまうという癖もついてしまっている。
向上心はなく、前世でもそこそこ勉強して近所のそこそこの大学に行けるならそれで十分、というスタンスだった。
ヒロインはクールなメイド、天真爛漫な原作ヒロイン、人懐っこい後輩。サブに勝気な同級生なども。
一番のお気に入りはメイドとしての仕事はもちろん、護衛役もこなす主人公専属のメイド、シノ。
アッシュグレーの髪をシニヨンにまとめた、全体的にスラッとした体型のクール系美少女。
クールに見えて、優しくたまにおっちょこちょいなところがあり、少し泣き虫で実は甘えん坊。
元々のゲルドが悪童だったため初期の好感度は低いが、憑依した主人公との相性は良い。
現時点(一巻)においての評価はC。
この手の悪役転生もので破滅回避のための最適解は、言うまでもなく悪事を働かず大人しくしておくこと。
しかし話の都合でそれができず、なんだかんだで原作ストーリーに巻き込まれてしまう作品が大半の中
本作主人公は見事に最適解ルートを貫くことに成功しているわけですが、そこからまさかのループ発動。
繰り返し続ける世界から抜け出すために原作再現をし、その上で破滅回避もしなければならない。
というのがなんとも不憫すぎる。しかもこの行動自体が正答とは限らないわけですしね…
まあ、肝心の当人が良くも悪くもアホなので悲壮感はないですし、勘違いものっぽい作風になっているので
フラストレーションもたまらず、読んでいて愉快でしかないのですが。
本筋は六周目にしてようやくゲーム主人公やヒロインたちとの接触に成功。
原作通り(?)に誘拐イベントも発生させるも、その後に起きた魔物襲来イベントで動いてしまった結果
攫われるはずのヒロインが攫われないという特大の原作ブレイクを起こしてしまい…?