英雄志望の悪役モブ転生者、無自覚に原作鬱シナリオをぶち壊す
                                            歌うたい(オーバーラップ文庫)



自称主人公の悪役モブが無自覚に鬱ゲー世界を救う勘違いファンタジーストーリー。
大枠としては異世界(ゲーム世界)転生ものですね。転生先は毎度おなじみとなった悪役モブですが
特徴は主人公がそれを認識していないこと。本作は女神によるお詫び案件転生なのですが
彼女が勘違いをしていたため、ヒーロー(主人公)ではなく、ヒイロという名の悪役モブへの転生
という形になっており、それを知らない主人公は自分のことをこの世界の主人公だと思い込んでいるわけですな。
ゆえに本作は勘違いコメディものとしての色もあるですが、それと同時に、真っすぐな想いと積み重ねた努力で
タイトルに違わず原作の鬱シナリオをぶち壊していく熱さと爽快感も楽しめます。
ラブコメ面は今のところ進展なし。フラグは何人かに立っているようですが…

主人公は物心ついた時から異常なほど英雄に憧れていた青年。
鬱ゲーと名高いSRPG「灼炎のシュラ」の悪役モブに転生するも、己がこの世界の主人公だと思い込んでいる。
元の身体の影響なのか、喋ろうとしていることが滅茶苦茶乱暴な言葉遣いに変換されてしまう。
ヒーローを自認しているがゆえに、その精神力の強さと努力家なところは他者の追随を許さず
バカがつくほど真っすぐで正義感が強く、誠実、無鉄砲、そしてポジティブな性格で、諦めというものを知らない。
前世においてもヒーローに憧れているだけで終わらず、狂気の沙汰ともいえる努力を怠らなかった。
その一方で、修行にかまけていたがゆえに勉強は壊滅的。
泣いている女の子を庇い、暴漢のナイフに刺されたことが前世での死因。

ヒロインはぶっきらぼうなゲーム主人公、大人しい魔術師、性悪な女優。
一番のお気に入りは主人公が所属することになったレギンレイヴ隊の仲間である魔術師、リャム・ネシャーナ。
春を思わせる桜色の三つ編みツインテールと、蒼と桜色が混ざったような瞳の色が特徴的な小柄美少女。
面倒見がよいが自己評価が低く、健気で物静かな性格で自己主張をほとんどしない。
魔術師としては優秀で、一人一色までが基本の四原色を二色使うことができる。
趣味は料理。

現時点(二巻)においての評価はC。
鋼を通り越してオリハルコンなメンタルを見せてくれる主人公の真っすぐ折れない生き様が目を惹く作品。
いや本当、異世界の過酷な環境で身に着けたとかではなく、元の世界、つまりは現代日本でこの精神性を
維持し続けていたとか凄いの一言しかありません。まあ、物語の舞台となるゲームがえげつなさすぎるというか
これくらいのガチさがないとハッピーエンドを引き寄せられない世界観&シナリオであるため
ある意味奇跡的なマッチングだと言えるのですが。実際、主人公の「主人公ならこうする!」ムーブによって
作中では良改変(女主人公のヒロイン化や破壊の権化となるキャラの改心など)が起こりまくりですしね。
本筋は任務地で起きた復讐劇を食い止めることに成功するも、主人公は黒幕に目をつけられてしまい…?