俺が主人公じゃなかった頃の話をする 二階堂紘嗣(MF文庫J)
重ならないヒロインたちの認識の中に、確かに存在していたとされる主人公の日常系ファンタジー。
バトルやらファンタジーやらサスペンスやらタイムトラベルやらが要所に散りばめられてはいますが
分類的には一応日常系ラブコメメインの作品ということでいいと思います。
挿絵の可愛らしさと個性的なヒロインたち。という華やかな雰囲気に反し、謎が謎を呼ぶ不気味な構成。
期待と同時に底知れない印象も抱いてしまう作品ですね。オチは結構拍子抜けですが。
ラストは諸々の問題を片付けた末に、メインヒロインの一条ありすと結ばれてハッピーエンド。
主人公は強大な力を狙われた無自覚な魔術師だったり、滅亡世界を救う唯一の救世主だったり
因果の糸で美少女と結ばれた許婚だったり、王子の転生だったり、天才科学者だったりする少年。
しかし自覚範囲では本人はいたって常識的かつ普通の人間であり
自身がヒロインたちが主張するような主人公的存在だとはまるで思っていない。
ただ、ヒロインの危機や悲しみにはガチで身体張ったりと行動は実に主人公らしかったりも。
ヒロインは活発なツンデレ幼馴染、SM両刀な雪女、変態な自称妹、ぼくっ娘人魚姫、ゴスロリアンドロイド義娘。
一番のお気に入りは「千年魔女」の異名を持つ魔術師な幼馴染、一条ありす。
古くはイギリス王室とも繋がりのある名家のお嬢様で、黙っていれば気品のある美少女。
しかしその中身は明るく活発的で、社交性もあり行動力も抜群で正義感も強い。
また、自身の生まれを鼻にかけない気さくな性格でもある。
幼馴染である主人公に対してはたまに無防備だったりツンデレだったりするところも。
スポーツ万能で成績も悪くなく、何でもできるタイプではあるも、料理だけは下手。
評価はD。
「主人公」をテーマにし、風呂敷を広げるだけ広げて、尻すぼみに畳んだ挙句、よくわからないまま終わった。
迷走のイメージばかりが強く、結局これだというものが伝わってこなかった。というのが正直な感想です。
しかも最後のクライマックスはありすとの二人きりで決着とか。
最終的に彼女が選ばれたのは別にいいんですが、かませにすらなれなかった他ヒロインは一体何しにいたんだと。
なのにエンド後も皆一緒だからこれからもきっと楽しい、とかわけがわからない…
主人公も所々で活躍こそするものの、大半が補正頼りの無力&無知状態のまま流されていただけで
自力でバシッと決めてくれたのは実質的に最後の告白シーンだけという。
日常シーンだけ切り取れば、主人公とヒロインたちの掛け合いがテンポがよくいい感じだったんですけどね。
それだけに、本筋の支離滅裂っぷりが足を引っ張りまくっていたとしかいいようがありません。
まあ、ツンデレ幼馴染系メインヒロインが良質に描かれていた、という一点は大きな評価点でしたが。