ゼルトリーク戦記   ネコミコズッキーニ(モンスター文庫)



失意の底から成り上がるエロティック英雄譚。
大枠としては中世風のファンタジー世界(神秘要素も存在する)を舞台にした戦記ものですね。
巨大でありながらも三つに割れてしまった帝国の統一という主人公の目的も王道中の王道。
特徴としては、元が官能小説サイト発の作品ということで、ヒロインたちとの情事描写が多めなことでしょうか。
まあ、これに関しては婚姻によって勢力を拡大していくという都合上、妻を複数持つことが必須であり
その上でお互いに若い男女なのだから、肉体関係を持つのは当然ではあるのですが。
勿論、エロばかりにかまけているわけではなく、戦闘シーンでの血沸き肉躍る迫力と痛快さも申し分なし。
ラブコメ面は恋人のことを想いつつも二人の妻と子作りに励む主人公。

主人公は実兄が起こした政変により国を追われてしまい、隣国へと逃れて武人として新たな人生を得るも
隣国に侵攻してきた帝国によって再びすべてを奪われ、失意のどん底に突き落とされた帝国の皇子。
その後、古の契約に導かれた最強の民族たちと共に実兄を打ち倒すべく立ち上がることに。
ずっと自分の人生に意味を、価値を見つけられずにいたが、偶然迷いこんだ地下空間で
知識と、強さ、そして精神力を掴み取ったことで、自分の居場所と安寧、これらを血と命を払って手に入れる。
すなわちゼルトリーク帝国の再統一とアマツキ皇国を取り返すことを固く決意した。
元皇子でありながらもえらぶったところがなく、どちらかというと落ち着いた性格だが、心の芯は熾烈。

ヒロインは勝気な幼馴染、聡明な皇女、昔馴染な遊牧民娘。
一番のお気に入りはアマツキ皇国の皇族(皇王の妹)ツキミカド・マヨ。
艶やかな長い黒髪に大きなグレーの瞳がとてもよく映えている絶世の美女。小柄だがスタイルも良い。
立場と外見に違わぬ気品の持ち主だが、割とその場の勢いで物事を決定するタイプであり、気さくな一面も。

現時点(二巻)においての評価はC。
ただ戦闘や駆け引きを繰り返すだけではなく、合間に主人公とヒロインの情事が挟まれていることによって
主人公側の人間らしい感情の動きが掘り下げられ、良い意味でのリアリティになっている印象。
エロシーン自体も長すぎず短すぎずなので文章のテンポを崩していませんしね。
ただまあ、エロによって読者の対象年齢が上がっているがゆえに、敵側の非道さやクズ度も酷いですが
その分、勝利時の爽快感も一際なので英雄物語としては良作の予感しかしません。
本筋は初陣に勝利、更に敵の大軍を撃破、大領主を取り込むなど勢力拡大は順調な主人公ですが、さて。