救世主の命題   今井楓人(MF文庫J)



未来の世界を救うために、一人の少年が五人の女の子と恋して心を通わせる物語。
一見するとハーレム上等設定ですが、進行は個別攻略オンリーです。
なお、攻略が終わったヒロインは(周囲の人間含めて)記憶がリセットされる鬼畜仕様だったり。
好意は残るようですが、主人公からすれば本気で恋した女の子との関係を何度も強制リセットされるという。
うん、私なら一人目で心折れますね。その一点だけで尊敬できますよこの主人公。
ラストは、また恋をするために立ち止まらずに歩いていこうエンド。

主人公は未来の地球を救う救世主となる予定の少年。
厨二病でオタク、オカルトに傾倒している上に陰気でチビ。成績運動もパッとせず影も薄い。
優秀な弟にコンプレックスを持っており、自意識過剰で自己主義。
けれども周囲からの自分の評判が気になって仕方がない、小心で捻くれた性格の持ち主。
また、早とちりしやすく思い込みが激しくて、そのくせチョロい。
……と、とても後の世界を救うとは思えないキャラをしている。

ヒロインは天然ボケな人気者、キツイい性格のモデル少女、無口無表情な下僕少女、お人よし地味娘。
あと、いじめられっ子後輩と超美人キャリアウーマンがヒロインに昇格するはずだったが、本編終了。
一番のお気に入りは「聖域」のテーゼである少女、三田ひより。
真面目で親切で善良で面倒見が良く、嫌な顔一つせずに面倒ごとを引き受けたり誰にでも優しかったりと
とにかく心が綺麗で、人間の善性を体現したような、正に聖女と評すべき性格をしている。
派手系の美少女である堀井芹乃が親友であるため地味な印象をもたれることが多いが、容姿は十分整っており
その性格の良さとお嫁さん適性の高さを合わせると、実はかなり女の子としてハイスペック。
更に、主人公とは幼い日に出会っており、未来でも傍にいたなど、ヒロイン力も抜群だったりする。

評価はC。
各巻、終盤以外の大半を主人公が鬱々悶々してるだけなので、そこを耐えられるかがポイントな作品かと。
まあ、成長物語としての側面が強いのである程度は我慢すべきではあるのですが…
バトルものではないのでどうしてもカタルシスに欠け、イラッとくる気持ちを止めにくいのが難点でしたね。
一方、ヒロインたちはそれぞれの恋する姿がとても可愛らしく、魅力的に描かれていたと思います。
本当、惚れる相手間違ってるよといいたくなる良い子ばかりでしたw
本筋に関しては普通にこの後四巻が出せる、話を纏めるつもりなんてまるでない感じの打ち切りエンドでした。
当然攻略対象はまだ残っている状態ですし、伏線は投げっぱなしです。ある意味逆に潔い。
しかしこの作品、明らかに三巻ヒロインのひよりがメインヒロインの風格をだしまくりだった気が。
諸問題が片付いたら主人公争奪戦が行われるのでしょうが、他ヒロイン勝ち目ないだろこれ。