煩悩の数だけ恋をする 汐月巴(MF文庫J)
才能のために恋を頑張る青春ラブコメストーリー。
事情があって主人公は多数のヒロインを攻略しなければならない、という設定のラブコメは珍しくありませんが
本作は完全に主人公の自己都合、いわば我欲のためというのが良くも悪くもインパクト抜群。
いやだって、女好きでもないのに自発的に複数人(しかも本作の場合は108人)の異性を恋に落とそうとするとか
普通は考えませんしね。元々自分が持っていたものを取り戻すために、と言えば納得できなくはないのですが
発想がぶっ飛びすぎていますし。まあラノベの主人公としてはこれくらい突き抜けているほうが爽快ですけども。
性格は最悪ながら、ヒロインを落とす時の言動は誠実ですし、攻略完了時に彼女たちを幸せにはしていますしね。
いやまあ最終的に108股しようとしている奴のどこが誠実なんだって話ではありますがw
ラブコメ面は全員納得の上で四人のヒロインと恋人となった主人公ですが、さて。
主人公はある日突然、天の神の手違いを修正されてしまったことで、何でもできる完全無欠の天才から
何ひとつ上手くできない凡人以下の存在に成り果ててしまったがゆえに、失った才能を思い通りに利用するため
本来の才能である「恋愛の才能」を活用して108人の少女を恋に落としていくことになった少年。
超がつく自信家であり、言動も尊大と傲慢を絵に描いたような性格で、他人を憶えることと敬うことに不慣れ。
また、リアリストであり、常に己の利益のためにのみ行動するのが主義であったりと、打算の塊。
ただ、こうと決めた時の行動力と不屈の精神は人並外れたものがある。
才能を失う前は恋愛に対する理想が高く、自分に見合う相手がいなかったため興味が持てなかった。
ヒロインは影が薄いギャル、外面完璧なドジ娘、人間不信な小動物娘、男勝りな昔馴染。
一番のお気に入りはドジだけど外面だけは完璧なクールビューティー、深海渚。
細長く均整の取れたスタイルに加えて、肩口に触れる程度の黒髪ショート、利発そうな大人びた面立ち。
大人っぽく、唇の隣に官能的なホクロを飾り、超然としたオーラを漂わせた美少女。
周囲からはどんな事でもそつなくこなす完璧なクールビューティーと評され
異性からも同性からもモテているが、誰ともなれ合わず、自ら他人を遠ざける孤高の人。
しかしそれは圧倒的な幸運で己の理想を装っているだけであり、素は要領が悪いドジっ娘で自分に自信がない。
その一方で、小さい頃から多くの苦手を克服するために奮闘する向上心の強い努力家でもある。
現時点(一巻)においての評価はC。
主人公の動機がクズすぎるとか、神様がクソすぎるなど設定面で無茶苦茶さが目立つ作品ではありますが
その分勢いというか、エネルギーに満ち溢れている作風が他にはない魅力を放っていると思います。
攻略対象が108人という大人数な都合上、テンポが良すぎるというか、ヒロインはかなりチョロい娘揃いですが
それが味になっていますし、攻略の過程で人格破綻者だった主人公がまともになっていく成長物語感も良き。
ただ、不安なのはやはりヒロインの数の多さ。この手の話でちゃんと全員描写しきった作品は皆無ですし…
本筋は攻略の過程で改心し、恋人となった四人のヒロインを幸せにすることを誓った主人公。
しかしこれ、もう残りの104人は(少なくとも恋愛的な意味では)攻略する必要がなくなったのでは…?