天翔虎の軍師 上総朋大(富士見ファンタジア文庫)
強大な帝国に滅ぼされた祖国を復興し、天下統一を目指すべく奔走する少年軍師の戦記物語。
アーティファクトと呼ばれる特殊能力道具の存在を除けば、中世ヨーロッパに近い感じの世界観になっており
文章は戦記ものでありながらも軽めで、戦闘描写も見栄え重視で殺伐さはかなり薄め。
ただ、主要キャラの個人性能に頼りすぎていて、折角の軍師主人公を活かしきれていない感も。
ラストは帝国との一大決戦に勝利するも、平和は遠く戦いの日々は続くエンド。
ラブコメ的にはメインヒロインのミオと結ばれ、数年後には子供も生まれて大団円。
主人公は軍師として滅ぼされた祖国のために立ち上がった少年。
師からは天翔虎(カルーディア)の道号を授かっており、軍師としては天才型。
ただし、身体の線は細く体力も腕力もない優男であるため、荒事は苦手であり完全に頭脳労働タイプ。
また、軍師として動いている時は凛々しいものの、普段は気弱でヘタレ。
考え事をすると、妙に落ち着きがなくなる癖がある。
ヒロインはカリスマな幼馴染姫、サディストな眼鏡幼馴染、寡黙なライバル軍師。
一番のお気に入りは大陸屈指の天才軍師にして主人公の同門兼ライバル、ユミカ・ローレンツ。
軍師としては主人公と同じ天才型で、その力量は同門の中でも一番。
黒い髪に黒い瞳、実年齢よりも幼い印象を与える小柄で凹凸に乏しい身体つき。
そして常に人を寄せ付けない空気に寡黙な態度は、まるで人形を思わせる。
口を開いても、気が強い上に端的かつ率直にモノを言うため長く会話が続かず、興味のないことに関しては
バッサリと切り捨てる性質なため周囲からは浮いた存在だったりする。あと、微妙にヤンデレ気味。
想い人である主人公と結ばれることはなかったものの、最大のライバルとして本編後も戦いを繰り広げた模様。
評価はC。
戦記ものとしては雰囲気が明るめで読みやすく、進行もスピーディーでした。
ただ、テンポが良すぎて戦争やってる感が薄くなり、読み味が半ば戦略ゲームっぽくなっていたのはマイナス点。
敵の大物があっさり退場したり、アーティファクトが便利すぎたりと悪い意味でのご都合主義も強かったですし。
本筋に関しては、最終巻の駆け足が少々気にかかるも、復興物語として綺麗に纏まっていた印象。
微妙に打ち切りっぽい終わり方ではありましたが、タイミング的にはここで終わるしかないってところでしたしね。
個人的に不満だったのは、ミオ以外のヒロイン候補二人の扱いでしょうか。
片や失恋を策に利用され、片や帝国を裏切ることができないがゆえに敵として相対するしかない。
王配という立場上、ハーレムにするのは無理としてももうちょっとどうにかならなかったのかと思わざるをえない。