主人公の幼馴染が、脇役の俺にグイグイくる   駱駝(電撃文庫)



奇跡的に得られた二度目の人生で奮闘する少年による脇役ラブコメ甘々復讐譚。
大枠としてはタイムリープものですね。二年前の高校一年の入学式の朝に時間逆行した主人公の話です。
この手の話は、主人公が抱えている後悔の解消、が物語に軸になっていることが常。
現代日本が舞台の場合は灰色だった青春時代を取り戻したい、好きだった女の子を振り向かせたい。
このように、共感はできても他者から見ると大したことがない動機ばかりなのですが、本作は違います。
一度目の主人公の境遇が悲惨な被害者そのものでしかないため、幸せになってくれとしか言いようがない…
まあ、そのための鍵となるメインヒロインの氷高命のぶっ飛び具合には少々引いてしまう部分もありますが
この主人公を幸せにするにはこれくらいのパワーがないと駄目だということなのでしょう、たぶん。
ラブコメ面はメインヒロインの氷高命がグイグイくる状況にタジタジの主人公ですが、さて。

主人公は文字通りラブコメに殺された後、回帰して奇跡的に二度目の人生を手に入れた少年。
家族を守るため徹底的にラブコメを回避しようと奔走するも、何故かクラスメイトの氷高命に告白されてしまう。
特徴のない薄顔、平均よりやや低めの身長、成績も運動も並以下とスペックは典型的なモブキャラ。
口では悪ぶってもお人よしさがにじみ出るタイプで、害ある相手であろうと救いの手を差し伸べることも。
一度目の人生で無残に家族を失ってしまったことから、家族愛(特に妹に対して)が限界突破している。

ヒロインは冷淡な級友。サブにツンデレな実妹なども。
一番のお気に入りは実質的に一度目の主人公を殺したラブコメ主人公の幼馴染、氷高命。
肩甲骨の少し下まで伸びた綺麗な長髪、雪のように白い肌、整った目鼻立ちの美少女。
その美貌と、誰にも心を開かず、近づくもの全員に冷淡な態度で接することから「氷の女帝」と呼ばれているが
アグレッシブな努力家(ストーカー)であったり、相手によっては口調が片言や端的になったり
やたらとポジティブシンキングで親しくなった相手には自分の考えを全く隠さなかったりと、本性はかなり愉快。
父親の愛人が産んだ子供であったがゆえに、家族からは冷遇され、愛を与えられずに生きていたため
そんな空っぽな自分に沢山の気持ちを詰め込んでくれた主人公のことを幼少期からずっと慕い続けている。

現時点(一巻)においての評価はC。
導入(一周目の主人公の末路)こそ悲惨すぎてフラストレーションが溜まりまくりではあったものの
二度目の人生が始まり、メインヒロインの氷高命が前に出てきてからは愉快痛快な日々が始まります。
また、一周目での加害者たちにしっかりと復讐を成し遂げる展開も用意されているのでカタルシスもバッチリ。
いや本当、ラブコメ主人公サイドの人間が邪悪すぎて不快感がヤバいですからねこれ。
殺し合い上等のファンタジー世界ではなく、現代日本舞台の話なのにこの救いのなさはある意味凄い。
だからこそ、そのぶっ飛び具合が逆に清涼剤になっている氷高命の存在が救いなのですが。
本筋は自身に不幸を押し付けてきた者たちに復讐を果たし、平和な日常を手に入れた主人公。
しかしここでハッピーエンドとはならず、どうやらまだ物語は続くようで…?