放課後四重奏   高木幸一(GA文庫)



人間嫌いの少年と、三人の少女たちによるお悩み相談青春ラブコメディ。
大枠としては、持ち込まれる問題を解決するタイプのよくある特殊部活動ものですね。
年頃の少年少女の、垣根のない和気藹々とした雰囲気がいかにも青春時代といった感じでグッド。
主人公もこの手の作品にしては珍しく個が確立しているタイプなので新鮮味もあります。
ラストは、メインヒロインの心月と結ばれて、それでも皆の騒がしい日々は続いていくよエンド。
ふられたヒロインたちが変に物分り良く祝福したり、他の男をあてがわれたりするのではなく
前向きに主人公の事を諦めない様子なのが良い感じでした。

主人公はお悩み相談の部活を立ち上げる羽目になってしまった少年。
努力型の文武両道であり、素行も悪くなく、地頭が良くて考える力があるタイプ。
表面上はかなりの優等生なのだが、その内面は人付き合いを好まず、他人に興味がなく、人間嫌い。
なのでぶっきらぼうで口調が乱暴、ハッキリとした物言いでそっけない、と社交性が皆無な問題児。
しかし実際は相手の話はちゃんと聞くし、不器用ながらも返答もシッカリする。
また、人の好意を無碍にすることはなかったりと、根は決して悪い人間ではない。
ただ、他人に興味を持たないがゆえに、女性に対して素で口説き文句じみた言葉をかけるという困った一面も。
テレビは見ない、携帯未所持、私服は常にジャージとおよそ今時の若者らしくない私生活をおくっている。

ヒロインは天然飛び降り少女、アニメ好きな後輩、恋愛脳な同級生、騒がしい眼鏡後輩。
一番のお気に入りは二次元の男性に恋した後輩、草ヶ部詩織。
大人びた雰囲気を持ち、基本的に無表情で口を開いても基本的に無駄なことは話さず
物事を先読みして決め付けるタイプのクール系少女。
また、頭の回転が速く、空気も読めると何気にハイスペックなのだが、実はかなりイイ性格だったりする。
外見の印象に反して、アニメ好き。

評価はC。
ラブコメものにありがちな優柔不断さがなく、安定感がある主人公、個性派揃いのヒロインたちと
前フリに違わぬ、甘酸っぱい正統派青春ラブコメを楽しませてもらいました。
ただ、最終巻が少々詰め込みすぎというか、もう少し巻数をかけ、お悩み相談者のトラブル解決をやって
主要キャラの掘り下げと人間関係の推移を丁寧に描写してほしかったところ。
ここが不十分だったせいで、心月が恋人に選ばれたことに疑問を浮かべてしまうんですよね。
心月が嫌い悪いという問題ではなく、他のヒロインほど魅力を掘り下げられていないまま選ばれてしまったので
「設定上のメインヒロインだから」という作者の贔屓的印象が強い感じになってしまったというか。
そこさえちゃんとしていれば、読後感の良い丁寧な作品だったと思うんですけどね。