転生魔王と勇者候補生の学園戦争 ジャジャ丸(GA文庫)
人の力に興味を抱いた転生魔王様の学園無双譚。
大枠としては未来転生ものですね。最強ゆえに現世に飽きていた魔王(主人公)が、己を超える可能性のある
人の力に期待し、千年後に転生。しかしそこは魔族の恐怖を忘れた平穏な時代になっていた。
ただ、舞台となる世界は平穏平和であるとはいえ、きちんと過去の英雄である勇者を称え、尊敬し
その名に恥じないように研鑽を積む者が多かったりと、精神面での堕落がなく、実力者も多いというのが新鮮。
まあ、それでも皆主人公には及ばないのですが、他の同系統作品だと身も心も堕落しまくった人間ばかりで
何のために転生したんだってなることが多いので、これなら主人公の期待も報われそうでグッド。
ラストは次代の勇者&魔王と戦い、満足を得た主人公は勇者候補生二人と旅立つのだったエンド。
ラブコメ的には進展がないまま終了。というか、そもそも主人公は恋愛感情を理解していなかったですし…
主人公は遥かに格下だった勇者に傷をつけられたことで、人間という種族に興味を持ち
人の力を確かめるために千年後に人間の姿で転生した、かつて魔境に君臨していた魔族の王。
魔王らしく尊大な性格で、常に動じず自分を取り繕うことをしないが、他者の言を聞き入れる寛容さもある。
その一方で、絶対的な強者であるがゆえに、意図せずに相手を挑発してしまうことが多い。
生まれた時から一人で、家族というものが存在しなかったことから別段種族に対する拘りはなく
前世での人魔戦争も配下が勝手にやっていただけで、当人は人類殲滅や世界の覇権に興味はない。
ヒロインは忠義厚き令嬢、勝気な勇者候補。
特に際立ってお気に入りのヒロインはなし。
評価はD。
この手の作品は、主人公が己と周囲の実力差を勘違いしたり、実力を隠したりというパターンばかりで
真実を把握している読者視点だと登場人物たちの節穴っぷりにもどかしさを感じてしまいがちですが
本作の場合はちゃんと主人公が圧倒的な力を周囲に示す形で動いているのがよかったですね。
低きに流されるキャラも少ないので、見ていて清々しかった。勿論そうでない愚か者もいるのですが。
本筋は二巻完結と短めながら、話そのものは綺麗に纏まっており、読後感は良かった印象。
まあ、ラストバトルを含めて主人公の全力全開は見られずのままと盛り上がりは微妙だった感はありますが…
これに関しては元々本編内で勇者候補生たちが彼を上回ることが無理ゲーだったので仕方なし。