あの頃イイ感じだった女子たちと同じクラスになりました   御宮ゆう(角川スニーカー文庫)



あと一歩、告白できなかった君へ。未練と後悔を救う青春ラブコメストーリー。
ヒロインが元カノ。あるいはフった、もしくはフられたことがある相手というパターンはたまに見かけます。
しかしヒロイン全員が「かつてイイ感じの雰囲気になったことがある相手」というのは珍しい。
というかこの「イイ感じ」という関係性自体がかなり曖昧なものなんですよね。定義が主観次第なわけですし…
告白という一歩を踏み出していない以上、ぶっちゃけただの知人ないしは友達でしかないのも確かで
下手すればただの自意識過剰になるだけだから難しい。実際本作主人公は過去にそれで失敗していますし。
ラブコメ面は花園優佳への告白が成功し、恋人同士となりましたが、さて。

主人公はかつてイイ感じの雰囲気になった三人の女子と同じクラスになってしまった高校一年生の少年。
捻くれているというか、ヘタレで余計な思考に陥りやすいタイプの性格をしているが、根は真っすぐ。
高校では帰宅部だが、中学時代はハンドボール部に所属していた。
中二の冬、イイ感じだと思っていた意中の女子にこっぴどく振られた挙句、ありもしない噂を流され
評判を地に落とされたことが人生を狂わされたといっても過言でもないほどの心の傷になっている。

ヒロインは幼馴染、マイペースな元塾仲間、女友達ギャル。
一番のお気に入りは主人公が中学時代に通っていた塾の同級生、花園優佳。
全男子が守りたくなるような愛らしさがある、胸は小さ目な茶髪ボブ美少女。
掴みどころのないマイペースな性格をしており、時にまとうアンニュイな雰囲気もあってあまり人と話さず
陽キャに分類される人ともほとんど喋らないため、男子からは学校の「裏天使」だと囃されている。
ただ、人嫌いというわけではなく、仲良くなった相手とは気安く交流する。

現時点(一巻)においての評価はC。
「イイ感じ」という、友達以上恋人未満な関係性にスポットが当たっているのが中々に新鮮ですが
中途半端な関係であるがゆえに、毎度毎度主人公がヒロインたちの言動にヤキモキしたり右往左往してばかりに
なってしまっているのを痛々しく感じてしまうのが難点ですね。まあ年齢相応と言えばそれまでなんですが…
それに、だからこそ彼がトラウマを克服して勇気を出し、前に進む姿が映えるわけですし。
しかしその一方で、彼のお相手となるヒロインたちにはそれぞれ裏がありそうなのが不穏すぎて怖いところ。
本筋は「イイ感じ」の壁を乗り越え、見事に恋人を作ることに成功した主人公。
しかし恋人となった花園優佳には何か思惑があるようで、すんなりとめでたしめでたしとはいかない模様。