バケモノのきみに告ぐ、 柳之助(電撃文庫)
バケモノに恋をしたこと、きみにはあるか? 或る少年の追想と告白。異色の伝奇×追想録。
感情を力に換える異能者「アンロウ」という存在が核となっている物語ですね。
大枠で言えば異能バトルとミステリーが組み合わさった話なのですが、単純にそれだけで済む話ではありません。
主人公は政府直属の秘密組織に所属しており、街で起こる怪事件を秘密裏に処理することが仕事。
つまりは警察的なポジションについているわけですが、アンロウは頭のネジが外れている人間ばかりであり
仲間である四人のヒロインもその例に漏れないため、どの事件も一筋縄ではいかないわけで…
ラブコメ面は実質的にヒロイン四人を囲っている(囲われている?)ような状況の主人公ですが…?
主人公は秘密組織「カルテシウス」のエージェントである少年。
顔立ちは整っているが垂れ目とぼんやりとした表情と雰囲気で美男子という印象はない。
首の後ろで結ばれた灰色の髪と厚手のコート、妙に似合う黒いフェルトハットが特徴。
過去に軍隊にいたため、生存力は高いのだが、ずぼらというほどではないものの、生活力は高くない。
マメな性格ながらも軽薄で飄々とした態度が常だが、その根底は頑固一徹にして不変。
異質な寛容性の持ち主で、理解できないものを理解できないままに愛することができるが
罰せられるべき人間や守りたいものを守るためには邪魔な人間には容赦がない。
ヒロインは人間嫌いの涙花、忠義厚き魔犬、剛毅な宝石、奔放な妖精。昇格候補にクールな元婚約者。
一番のお気に入りは「涙花」のコードネームを持つアンロウ、シズク・ティアードロップ。
暗い黄の瞳に、色素の抜けた白髪が目を惹く、十六歳にしては背が低い、発育が残念な美少女。
触れたものの何か思念のようなものを読み取り、それをヴィジョンとして見る異能を持つ。
女学校に通っていたが、集団発狂事件を引き起こし中退。その後主人公に保護されている。
引きこもりであり、主人公との仕事がない日は自分の下宿先で趣味のバイオリンを弾いているのが大半で
全て独学で創り出した楽曲を主人公に聞かせるのがライフワーク。
クールでダウナー、内向的だが攻撃的な性格をしており、人間嫌いで皮肉屋、人付き合いが苦手。
現時点(二巻)においての評価はC。
これから尋問が始まるという主人公が囚われている状態からのスタート、というインパクトが目を惹く作品。
彼が今まで四人のヒロインたちとともに解決してきた事件を語る、という形で進んでいきます。
ただ、一巻においてはヒロインたちとの出会いや仲を深めていく交流の部分をほぼ吹っ飛ばして
既に信頼関係が構築されている状態での事件が描かれているため、色々説明が足りない感があったかと。
四人のヒロインの掘り下げ回を全部済ませてからの第五巻を読んでいるような感じというか…
読んでいて内容についていけない、というほどではないのですが、消化不良感は否めない印象。
そのあたりの不満は二巻以降で解消されるので、まとめ読みすれば問題ないのですけどね。
本筋はそれぞれの過去に関わるふたつの事件を解決し、仲を深めた四人のアンロウたちですが、さて。