ヤクモとキリヱ   てにをは(MF文庫J)



最恐の怨霊・キリヱにとり憑かれた少年がすべての怪談を殴り飛ばす爽快バトルストーリー。
大枠としては怪異退治ものですね。怪異についてしっかり描写がされている上、イラストの迫力も申し分なしと
一見するとホラー要素が濃いように見えますが、登場する怪異は散々恐ろしさを強調されるにも関わらず
毎度駆け付けた主人公に拳一つでぶっ飛ばされてしまうため、シュールギャグ感のほうが強い印象。
勿論、怪異が害悪な存在であることは疑う余地がないので、カタルシスも申し分ないのですが。
ラブコメ面は主人公に憑りついているキリヱが色んな意味で強すぎて、他の女性と恋愛できない気が…

主人公は幼い頃から最恐の怨霊・キリヱにとり憑かれ、まともな人生が送れていない十七歳の少年。
彼女に幼い頃から呪われ呪力を込めた仮面を被せられ、外せぬせいで、友達も恋人も家族もおらず
当然のごとく働き口もないため、最初から失うものなどない無敵の境地に達しており
なにも我慢しないで好き勝手楽しく生きてやると心に決めている。
単純かつ現金な性格で物言いも率直だが、考えなしのただのバカというわけではない。
色恋には興味津々で、将来的には顔と体のいい女と結婚したいと思っているが、オカルト方面の女はお断り。

ヒロインは最恐の怨霊、真面目な霊能力者、クールな霊能力者、気位の高い霊能力者。
一番のお気に入りは対外来呪駆除組織・神代寮関東支部所属の異師、化嶋霊子。
光の当たり方によっては夜明け前の海のような藍色にも見える黒の長髪と暗く鋭い目が特徴の美少女。
霊能、霊感とは無縁のごく一般の家庭に生まれ育ったにもかかわらず、天性の才を持ち
組織から特別待遇でスカウトされ、文句なしの最強霊感女子校生として一目置かれている。
その肩書に違わず、関係者の前では常にクールでドライな態度を崩さない強者っぷりを見せているが
周囲が勘違いしているだけで、実は霊感ゼロの、ごく普通の、一般的で平凡な女の子でしかなく
内面は生まれついての夢見がちで、オカルトに傾倒した結果、霊感少女を自称しているだけだったりする。
ただし、霊力を持たないが故の生存本能なのか、危機回避能力だけは無駄に高い。

現時点(一巻)においての評価はC。
日本を舞台にした怪異バトルものでありながら、敵として対峙することになる主な怪異は和風ではなく西洋系
というのが珍しいですね。西洋系怪異ばかりである理由付けはされているので違和感はないのですが。
まあ、珍しいというのならば、異能を一切用いず、拳(物理)のみで怪異退治をする主人公のほうが…ですし。
一応主人公以外の味方サイドは異能を使うのですが、彼が凄すぎるがゆえに霞んでしまっていますしね。
本筋は怪異退治の組織に所属したことで、ひとまず生活が安定(?)した主人公ですが、さて。