君を「ナツキ」と呼ぶまでの物語 涼暮皐(MF文庫J)
ただひとりの少女を下の名前で呼んでみるまでの、なんでもない青春の物語。
大枠としては学園ラブコメものですね。複数ヒロインのラブコメでは、全員が幼馴染、同居人、家族関係。
といった風に、ヒロイン全員にストーリー上で必要なギミック的共通項があることが珍しくありません。
当作品における共通項は名前で、ヒロイン全員の下の名前の読みが「ナツキ」となっています。
これは幼い頃の主人公にトラウマを植え付けた人物の名前なわけですが、酷い偶然である。
ヒロイン側も当人以外はいい迷惑でしょうしね。主人公からの第一印象に自動デバフかかるわけですし。
ラブコメ面は今のところ進展なし。フラグが立っているヒロインは複数人いるようですが…
主人公は富裕層の学校である中高一貫の私立征心館学園に唯一の編入枠として入学した少年。
学園ではマネージャー代行業として周囲をサポートする代わりに対価を得て生活している。
中学までは周囲から「いい奴」と称されることが多い人間で、打算を働かせることを心底嫌っていたが
仲の良かった友達全員から裏切られたことで生き方を正反対に変えることを決意。
青春を欲さず、打算的に、契約的に、損得勘定を前提に人間関係を構築することを新しい信条とした。
ヒロインは計算ずくの天才令嬢、変幻自在の元子役、悪戯好きなクール娘、サークラ系天然娘、あざとい後輩。
一番のお気に入りは文芸部員でもないのに第二文芸部に入り浸っている同級生、水瀬懐姫。
淡い色合いのショートカットに、夜のように深い蒼黒の双眸が特徴的な美少女。
マイペースな性格で、平坦な口調で喋る。あまり表情が動かないため何を考えているのか分かりにくいタイプ。
頭がよく、中等部までの三年間では常に学年トップクラスの試験成績を誇っており
実家が興信所ということもあってか、情報処理能力が高い。
現時点(一巻)においての評価はC。
複数人いるヒロインの中に主人公が過去に出会った思い出の女の子がいる。
というのはラブコメではよく見かける設定ですし、そのヒロインこそが主人公と結ばれることになりがちですが
当作品の場合は思い出の女の子=トラウマの元凶であるため、設定が恋愛アドバンテージになっておらず
どんなに他ヒロインが頑張っても過去補正一つでひっくり返される、みたいなことがなさそうなのは安心。
キャラに関しては、一芸特化な学生が集まる学校だけあって、ヒロインたちの個性の強さが目立つため
彼女たちを何とかさばきつつ問題解決に奔走すう主人公にはご苦労様の一言しかない…
本筋は生徒会からの依頼で「ナツキ」たちと深く関わっていくことになった主人公ですが、さて。