男爵無双   水底草原(富士見ファンタジア文庫)



「高貴たる者の責務」を果たす王道ファンタジーストーリー。
大枠としては異世界転生ものですね。主人公は現代日本からの転生者ですが、旧華族の家出身というのが特徴。
現代日本出身であるがゆえに、貴族の家に転生しても貴族の責務や誇りを真摯に受け止められない。
強くなること、死なないことが優先で家督は兄弟に任せる。自由を求めて出奔することも厭わない。
という主人公が多い中、転生前も貴族の家で生きてきたがゆえに、立派な貴族になるぞ!
と決意するというパターンは新鮮ですね。まあ、前世の家族はただの反面教師でしかないのですが。
ラブコメ面は寄親の令嬢であるオリビアから実質的なプロポーズをされた主人公ですが、さて。

主人公は世間体や血筋に執着する旧華族の銀条家の落ちこぼれとして家族から愛されずに育つも
ある日、現実世界から消え去り、異世界の田舎貴族であるドラグオン家の長男に転生した少年。
通常は一つである魔力の源「魔核」を四つ備え、膨大な魔力量を誇る史上初にして規格外の存在。
前世の家族を見てきたがゆえに貴族という存在を侮蔑していたが、貴族として正しい在り方を貫く
現世の両親に愛情を注がれた結果、領民や家族、家臣を守れる立派な貴族になることを決意した。

ヒロインは気高き令嬢。
一巻の時点では特に際立ってお気に入りのヒロインはなし。

現時点(一巻)においての評価はC。
落ちこぼれとして蔑まれていた少年が、異世界に転生し両親から愛を受けることで前を向くようになり
そして、心の中心に宿った正しい意思を貫くために規格外の才能で無双する!
主人公の心の成長、決意、活躍に至るまでの全てが実に気持ち良い、正に王道ファンタジーな作品。
ラノベで出てくる貴族は腐敗している者が多く「ノブレス・オブリージュ」を果たしていることは滅多にありません。
しかしだからこそ、主人公自らが真剣に責務を果たさんと奮闘する様が美しく輝いています。
本筋は死闘の末、竜を式とすることに成功。前途は洋々、しかし波乱の人生も確定の様子。